結論ですが
異所性妊娠の可能性がある場合は、担当医の指示を守るようにしましょう。
この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
妊娠中の病気に関するさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「異所性妊娠」についてわかります。
「妊娠反応が陽性」と出た場合、産婦人科を受診するかと思います。
その時に、異所性妊娠の可能性があると言われることもあります。
- 異所性妊娠って何?
- 以前は子宮外妊娠って言われていたようだけど何?
- 出血もあるし心配!
などさまざまな不安があるかと思います。
異所性妊娠は、お腹の中への大量出血から命を落とすこともありうるコワイ病気です。見逃さないためにも、異所性妊娠が少しでも疑わしい場合は慎重に対応していくことになります。
今回「異所性妊娠」について説明していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 異所性妊娠とは、「子宮の中の正常部位以外の部分に着床した場合」をいいます。
- 異所性妊娠の診断は難しい場合があり、「正常妊娠」や「流産」の可能性も考えられる状況があります。
- 治療は、基本的に「手術」が行われますが、場合によっては「MTX」という抗癌剤による治療や待機的に経過をみることがあります。
異所性妊娠とは何ですか?
結論をいうと、異所性妊娠は「子宮の中の正常部位以外の部分に着床した場合」に診断されます。
そもそも、どのように妊娠成立するかというと…
まず、精子と卵が受精して受精卵になります。
受精卵は分裂を繰り返して細胞数を増やしながら、卵管を通過して子宮の中に移動します。そして、細胞を増やした受精卵が「子宮の中の正常部位」に着床して妊娠が成立します。
その受精卵がうまく移動できず「子宮の中の正常部位以外の部分に着床してしまった場合」に「異所性妊娠」となります。
なぜ「異所性妊娠」という名前?
異所性妊娠は、以前は「子宮外妊娠」と言われていました。
しかし、実は「子宮の中の妊娠」でも妊娠してはいけない部位があります。
たとえば、
- 子宮頸管(子宮の下の方)
- 卵管角(子宮と卵管の移行部)
- 帝王切開瘢痕部(以前に帝王切開をした患者さん)
などあります。
子宮の中の妊娠にもかかわらず、これらの部位は妊娠してはいけない部分です。
なぜかというと、組織として弱い部分だからです。
これらの部位に着床して、妊娠成分が大きくなっていくと、「破裂」や「大量出血」を来すことがあります。
つまり、子宮の中の部位にも妊娠してはいけない場合があり、その部位に妊娠した場合も「異所性妊娠」と診断されることになります。
「異所性妊娠」はどんな症状がおこりますか?
異所性妊娠の初期の状態で、妊娠成分が小さいときには基本的に「無症状」な場合が多いです。
しかし、妊娠成分が大きくなるにつれて「腹痛」や「性器出血」などの症状が起こります。
また、妊娠成分が破裂すると、お腹の中の大量出血から、血圧低下など「ショック状態」となり、「意識障害」や場合によっては死亡する場合もあります。
「異所性妊娠」はどんな検査をおこないますか?
異所性妊娠の検査
異所性妊娠を診断するために、「妊娠反応」や「エコー」、妊娠によって上昇する「hCG」というホルモン値の検査がおこなわれます。
実際の現場では、「妊娠反応陽性」にもかかわらず「子宮の中の正常部分に赤ちゃんの袋がみえない」場合に「異所性妊娠」の可能性を考えます。
とくに、異所性妊娠のほとんどは、「卵管」に妊娠してしまう場合が多いです。
エコーで「卵管」に明らかな妊娠成分を確認できれば、「異所性妊娠」と自信を持って診断できます。
しかし、妊娠成分が小さかったり、妊娠成分がエコーではわかりにくい部位にある場合は、妊娠成分をエコーで見つけられない場合があり、異所性妊娠を診断することが難しくなります。
異所性妊娠の診断は難しい
「妊娠反応陽性」にもかかわらず「子宮の中の正常部分に赤ちゃんの袋がみえない」場合に「異所性妊娠」の可能性を考えます。
しかし、異所性妊娠以外の可能性もあります。
具体的には…
- 正常妊娠:子宮中の正常部分に着床しているが、赤ちゃんの成分が小さすぎて確認できない場合
- 流産(生化学流産):子宮中の正常部分に着床しているが、赤ちゃんの成分が小さい時に死亡して、子宮の中にとどまっている場合
の可能性があります。
どのように異所性妊娠を診断するのか?
異所性妊娠と診断するためには、「正常妊娠」「(生化学)流産」の可能性を除外する必要があります。
基本的には1回の診察では、診断するのが難しいです。経過を慎重に追って、何回か時間をあけて診察していって診断します。
具体的には、
エコー検査で、明らかな妊娠成分が見えてくるまで経過を追ってみていくこと。
血液検査で、「hCG」(妊娠中に上昇してくるホルモン)値の推移を追っていくこと。
で診断していきます。
疑わしきは罰する
異所性妊娠は命を落としうるコワイ病気です。異所性妊娠が疑わしい場合には、診断が確定しなくても「手術」などの治療が行われる場合があります。
「異所性妊娠」はどんな治療をおこないますか?
異所性妊娠の治療は、基本的には「手術」になります。
お腹の中を観察して、妊娠している部分をみつけます。異所性妊娠のほとんどは「卵管」への妊娠です。
卵管への妊娠の場合は、妊娠成分の入っている卵管ごと摘出すること「卵管摘出術」が多いです。卵管を温存できそうな場合は、卵管に切開を加えて妊娠成分のみを除去することもあります。
基本的には手術による治療ですが、場合によっては、
- 「MTX」という抗癌剤を用いて治療すること。
- 全身状態が落ち着いていれば待機的に経過をみること。
もあります。
まとめ
- 異所性妊娠とは、「子宮の中の正常部位以外の部分に着床した場合」をいいます。
- 異所性妊娠の診断は難しい場合があり、「正常妊娠」や「流産」の可能性も考えられる状況があります。
- 治療は、基本的に「手術」が行われますが、場合によっては「MTX」という抗癌剤による治療や待機的に経過をみることがあります。
何回も繰り返しになりますが、異所性妊娠は命をおとしうるコワイ病気です。
異所性妊娠が疑わしい場合には、かならず担当医の指示を守るようにしましょう。
また、異所性妊娠は、診断が難しい病気でもあります。
「流産」の可能性や、じつは「正常妊娠」であることもあります。
1回の診察では判断できず、何回か受診して頂き、時系列を追って判断することになります。受診は大変かと思いますが、かならず担当医の指示を守るようにしましょう。
この記事によって「異所性妊娠」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
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