お産のときに出血が多いといわれました!【産科出血】

結論ですが

分娩時の出血を適切に対処されないと最悪死に至ることがあります。

この記事は「お産のときに出血が多いといわれた」女性向けに書いています。
この記事を読むことで「産科出血に対してどのように対応するのか」がわかります。

お産は出血とのたたかいといわれています。
妊娠中や産後の子宮は赤ちゃんに栄養をあたえるために血流が豊富です。
赤ちゃんが産まれたあとに、子宮から大量に出血することがあります。

お産にともなう出血で最悪命を落とすこともあります。赤ちゃんを産むというのは、本当に命がけです。
残念ながら100%安全なお産はないです。万が一の状況にあったときに備えて、事前に知っておくことが大切です。

今回、「産後出血が多い場合にどのように対応するのか」について説明します。

この記事のまとめ

  • お産は出血とのたたかいで、迅速な対応が必要です。
  • 処置中は詳しい説明を受けられないが多く、場合によっては高次医療機関に搬送になることもあります。
  • 治療は「入れる」と「止める」
  • 原因を検索して除去する

お産は出血とのたたかい

迅速な対応が必要

お産のときの出血は、一瞬にして大量に出血してくることがあります。命を落としてしまうことがあるため、迅速な対応が必要です。
「意識状態」や「血圧」「脈拍数」「酸素化能」などのバイタルサインや、出血量を暫定的にも把握して、「産科危機的出血」だと認識することが大切です。
なお、出血すると、血圧が下がり、脈拍数は上昇します。さらに大量に出血すると意識状態が低下して意識がなくなることがあります。

処置中は詳しい説明を受けられないことが多いです

繰り返しになりますが、お産のときの出血は一瞬にして大量に出血し命を落としてしまうことがあるため、迅速な対応が必要です。処置中はスタッフが多く必要で、一刻をあらそう状態です。
時間がゆるせば説明したいところではありますが、処置中は詳しい説明を受けられないことが多いです。処置が終わって、ひと段落してからの説明になることが多いです。

場合によっては高次医療機関に搬送が必要です

出血量が多かったり、全身状態が悪かったり、産科出血が重度な場合には一般の分娩施設での対応が困難であることがあります。とくに、出血が大量で全身状態の管理が必要であったり、出血を止めるために緊急手術や大量輸血が必要である場合などには、高次医療機関への搬送が必要となることがあります。

治療は「入れる」と「止める」

「入れる」

産科出血によって、血液が大量に失われてしまいます。血液が足りなくなると、全身に必要な栄養や酸素を送ることが出来なくなります。
大量出血で、血液を失ってしまった場合は、補う必要があります。
点滴のルートを2本以上確保するとともに、「点滴」や「輸血」などを血管内に入れていきます。また、出血によって血液をかためる成分が足りなくなると、出血がさらに助長されてしまうため、「血液をかためる成分」も補うことがあります。

「止める」

お産後は子宮が元の大きさに戻ろうと収縮していきます。子宮の収縮がうまくいかないと出血してしまい「弛緩出血」(しかんしゅっけつ)と呼ばれます。産科出血の約半分が「弛緩出血」が原因です。「子宮マッサージ」や「子宮収縮薬」を使って、止血を促します。
赤ちゃんの通り道が裂けてそこから出血する「産道裂傷」の場合は、裂傷を縫合します。
原因は何であれ「圧迫止血」が止血の基本となります。子宮内に風船を入れる「バルーンタンポナーゼ」、子宮や腟内にガーゼを入れる「ガーゼ圧迫法」などおこないます。

原因を検索して除去する

「弛緩出血」「産道裂傷」に対応しても、出血が持続する場合には他に原因がないか検査していきます。その原因におうじて治療していきます。
また、はっきりと原因は不明だが子宮から出血が持続してどうしても止まらない場合には、「子宮全摘手術」が必要になることがあります。

まとめ

お産は出血とのたたかいで、迅速な対応が必要です。処置中は詳しい説明を受けられないが多く、場合によっては高次医療機関に搬送になることもあります。

治療は「入れる」と「止める」をおこないます。並行して原因を検索してそれに対する治療をおこないます。

産科出血は命をおとす可能性がありおそろしいものです。
医療者側は迅速に対応できるように、普段からシミュレーションなどして備えておくことが大切です。いざというときに命を助けられるように、チームとして対応できなければなりません。

少しでもお産が安全になるように日々努力しており、日本の妊産婦死亡数は世界的にみても少ないです。
しかし、日本においても「年間30-50人」の妊産婦が死亡しているという現実があります。残された赤ちゃんやパートナーなど家族のことを思うと胸が痛みます。

お産にかかわるスタッフのさらなる努力により、妊産婦死亡数が「0」になることを願っています。

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