ファットアダプトについて【マラソンと栄養】

結論ですが

ファットアダプトとは、脂質が多い食事を、長期的に食べ続けることで、脂質をエネルギー源として多く利用できるように適応させる方法です。

この記事は「スポーツを趣味にしている」ヒトに向けて書いています。
食事・栄養に対する疑問・悩み・不安などが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「ファットアダプト」についてわかります。

ファットアダプトって何ですか?

このような疑問にお答えします。

三大栄養素である「タンパク質」「脂質」「炭水化物」のことを「PFC」といいます。

タンパク質(Protein)
脂質(Fat)
炭水化物(Carbohydrate)

スポーツ選手やアスリートの場合、厳しいトレーニングに耐えうる体作りなどのために、食事・栄養がとても重要になります。
そして、この「PFC」がエネルギー源となるため重要となります。

マラソンなどの持久系競技において、とくに「炭水化物・糖質」(C)や「脂質」(F)が大切です。
今回は、そのうち「脂質」(C)についてピックアップします。

エネルギー源として「脂質」(F)をうまくエネルギー源として使うために、「ファットアダプト」という方法があります。

では、ファットアダプトとは何ですか?

ということで、今回は「ファットアダプト」について説明していきます。

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まとめ

1.ファットアダプトとは

ファットアダプトとは、脂質が多い食事を、長期的に食べ続けることで、脂質をエネルギー源として多く利用できるように適応させる方法です。

運動時のエネルギー源として、糖質や脂質が重要な働きをします。
とくにマラソンなどの持久系競技であれば、糖質・脂質ともにエネルギー源として大切です。

糖質は、エネルギー源としてすぐに利用されやすく、出力が高い運動で優先的に使われます。
短時間の運動であれば、酸素を利用しないでエネルギーを生み出す「無酸素代謝」
において、糖質はエネルギー源としておもに使われます。

長時間の運動において、酸素を利用してエネルギーを生み出す「有酸素代謝」
においては、糖質だけでなく脂質もエネルギー源として使われます。

糖質は、万能なエネルギー源です。
その場で使われない糖質はグリコーゲンとして、筋肉や肝臓に蓄えられます。
しかし、グリコーゲンとして貯蔵される量は「約1600kcal」程度と少ないです。

一方、「脂質」は「1gあたり約9kcal」のエネルギーがあります。
脂質は、出力が低い運動や、長時間持続するような運動をするときに安定的にエネルギーを供給してくれます。
マラソン競技では、2時間以上にわたる長時間の運動になるので、糖質だけでなく脂質もエネルギー源として利用することが大事になります。

強度の高めの運動において、糖質が少なくなってきたときに、脂質がエネルギー源として使われるようになります。
そのため、エネルギー源として利用されるまでに比較的時間がかかります。
また、出力が低いような運動をするときに、脂質がおもにエネルギー源として使われます。
脂質は、出力が比較的少ない、長時間の運動をするときのエネルギー源として活躍してくれるのです。

なお、これまで発表されてきたスポーツ栄養ガイドラインによると、脂質量はエネルギー摂取量全体の「25%程度」が望ましいとされてきました。
しかし、ファットアダプトでは、脂質が多い食事(エネルギー摂取量の70~80%程度)を、長期的に食べ続けることになります。
ファットアダプトでは、脂質を多く摂取することによって、脂質をエネルギー源として、より利用しやすくするために適応させる方法です。

ファットアダプトとは、脂質が多い食事を、長期的に食べ続けることで、脂質をエネルギー源として多く利用できるように適応させる方法です。

2.ファットアダプトの効果

ファットアダプトの効果として「持続的なエネルギー補給」「脂肪燃焼」「記憶保持効果」「抗炎症作用」「神経細胞の死滅抑制」「セロトニン機能を高める」「脳血流量の増加」などがあります。

ファットアダプトによって、脂質が使えるようになると、長時間の運動が可能になります。
脂質が利用されやすくなり、体脂肪などの燃焼効果も高まります。

ただし、脂質を利用するときにも糖質の存在が必要になります。また、脂質のみでは出力を上げるのが難しいとされています。

なお、脂質をエネルギー源として利用するときに、ケトン体という物質が産生されます。
一時期、脳のエネルギー源は「ブドウ糖」のみと言われていましたが、「ケトン体」もエネルギー源として利用することができます。

ケトン体は、「記憶保持効果」「抗炎症作用」「神経細胞の死滅抑制」「セロトニン機能を高める」「脳血流量の増加」などの効果があります。
ケトン体は、「難治性てんかん」の治療に用いられたり、アルツハイマー型認知症の改善効果が報告されています。

ファットアダプトの効果として「持続的なエネルギー補給」「脂肪燃焼」「記憶保持効果」「抗炎症作用」「神経細胞の死滅抑制」「セロトニン機能を高める」「脳血流量の増加」などがあります。

3.ファットアダプトの注意点

ファットアダプトの注意点として「カロリーを十分摂取する」「便秘予防をする」「脂質の質を意識する」などがあります。

ファットアダプトでは、糖質の量をおさえて、脂質の量を増やすことになります。
通常の食事の主食では、炭水化物・糖質がメインでありますが、その摂取量をおさえるため、摂取カロリーが不足しがちです。

摂取カロリーが不足すると、エネルギー不足のため、全身倦怠感や疲労感などによって、日常の活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、トレーニングにおいて、出力がうまく出せずに、トレーニングの質が上がらないなんてことにつながります。
糖質をおさえた分、脂質やタンパク質をしっかりと摂取して、カロリーをしっかりと補いましょう。

ファットアダプトでは、糖質や炭水化物の摂取を制限することになり、食物繊維も不足してしまいます。

食物繊維が不足すると、便が硬くなり、便秘気味になります。
また、食物繊維は、善玉菌などの腸内細菌のエサにもなるため、食物繊維が不足すると腸内環境は悪化してしまいます。

便秘予防するために、水分を積極的に摂取するとともに、糖質をおさえて食物繊維をメインにした炭水化物を摂取するようにしましょう。
食物繊維をメインに摂取するのが難しければ、サプリメントなどを活用してもいいでしょう。

また、基本的な部分ですが、よく噛んで食べること、適度な運動をすること、十分な睡眠をすることによって、消化管の運動が促されるため、便秘予防にもなります。

ファットアダプトで摂取する脂質の質にこだわりましょう。
脂質には、健康にとって「良い脂質」と「悪い脂質」があり、大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の二つに分けられます。

「飽和脂肪酸」は、エネルギー源として重要な脂質です。
以前は、動脈硬化の原因と言われて、悪い脂質として知られていましたが、最近では摂取量が少ないと反対に心血管疾患のリスクが高まるといわれており、適度に摂取することがすすめられます。

「不飽和脂肪酸」は、「一価不飽和脂肪酸」である「オメガ9系脂肪酸」、「多価不飽和脂肪酸」である「オメガ3系脂肪酸」や「オメガ6系脂肪酸」、「トランス脂肪酸」などがあります。

「オメガ3系脂肪酸」は、調理油などに含まれる「アルファリノレン酸」の他、魚類に含まれる「ドコサヘキサエン酸」(DHA)、「エイコペンタエン酸」(EPA)などがあり、健康にとって良い脂質です。

また、「オメガ6系脂肪酸」のほとんどは「リノール酸」であり、体内では合成されない必須脂肪酸です。
「オメガ6系脂肪酸」は、血液中の余分な「中性脂肪」や「総コレステロール」「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を下げる作用があり、「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」などの予防につながり、「心疾患」のリスクを下げる効果があることが知られています。

ただし、「オメガ6系脂肪酸」を多くとりすぎると、炎症反応を誘発したり、「HDLコレステロール」(善玉コレステロール)も低下してしまいます。

「トランス脂肪酸」は、常温で液体である植物油に水素添加させて、人工的につくられた脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、一般的に健康に悪い脂質として知られており、「食べるプラスチック」とも呼ばれています。海外では食品への「トランス脂肪酸」の使用が規制されている地域もあります。
トランス脂肪酸を摂りすぎると、血液中の「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を増加させるだけでなく、「HDLコレステロール」(善玉コレステロール)を低下させます。「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」につながり、「心疾患」のリスクを高めます。

ファットアダプトに限りませんが、「オメガ3系脂肪酸」は積極的に摂取し、「オメガ6系脂肪酸」「飽和脂肪酸」は適量を意識し、「トランス脂肪酸」は極力摂取しないようにしましょう。

まとめ

今回は「ファットアダプト」について説明しました。

この記事によって「ファットアダプト」についての理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。

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