チョコレートのう胞っていわれましたがどうすればいいですか?

結論ですが

チョコレートのう胞の治療は、「症状の程度」「病変の部位」「今後の子供の希望」「年齢」など総合的に判断して行われます。

この記事は「病気を指摘された」女性に向けて書いています。
女性特有の病気に関して理解を深めるお手伝いができればと思っています。
この記事を読むことで「チョコレートのう胞」についてわかります。

卵巣が腫れていると言われて、「チョコレートのう胞」かも…
と指摘されることがあるかもしれません。

  • チョコレートってかわいらしい名前…
  • なんだか美味しそう…
  • 体の中のにチョコレートなんて…

などと思うかもしれません。

子宮内膜症の病変が、卵巣にできて袋みたいに腫れている状態のことを「卵巣子宮内膜症性のう胞」といいます。
卵巣の中には、古い出血がたまっていて「チョコレート」のようになっているところから「チョコレートのう胞」という名前が付けられています。
基本的には「チョコレートのう胞」は「子宮内膜症」のひとつの病変ということになります。

今回「チョコレートのう胞」について説明していきます。

この記事のまとめ

  • チョコレートのう胞は「子宮内膜」が卵巣に発生することで起こります。
  • 子宮内膜症は「子宮内膜」が子宮の中以外の部位に生じる疾患です。
  • チョコレートのう胞によって「月経痛」「下腹部痛」「急激な腹痛」「不妊」「がん化」などに症状が起こります。
  • チョコレートのう胞の治療は「症状の程度」「病変の部位」「今後の子供の希望」「年齢」など総合的に判断して行われます。

チョコレートのう胞ってどんな病気ですか?

チョコレートのう胞とは

「チョコレートのう胞」は、本来子宮の中にあるはずの「子宮内膜」が卵巣に発生することで起こります。
子宮内膜症による病変が卵巣にできて、袋みたいに腫れている状態のことを「卵巣子宮内膜症性のう胞」といいます。
卵巣の中には、古い出血がたまっていて「チョコレート」のようになっているところから、「卵巣子宮内膜症性のう胞」は「チョコレートのう胞」という名前が付けられています。
基本的には「チョコレートのう胞」は「子宮内膜症」のひとつの病変ということになります。

子宮内膜症とは

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織の病変が「卵巣」「腹膜」「子宮の周り」など子宮内以外の部位に生じる疾患です。
子宮内膜症は女性ホルモンによって悪化するため、女性ホルモン分泌量が多い20歳代から30歳代に多く認められます。生殖可能年齢の女性の「約10%」に子宮内膜症があると言われています。
子宮内膜症は、月経とともに病変は悪化するので、月経が来なくなる「妊娠」や「閉経した後」は病変の発生は減少します。

チョコレートのう胞はなぜ出来るのですか?

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織の病変が「卵巣」「腹膜」「子宮の周り」など子宮内以外の部位に生じます。子宮内膜症自体を引き起こす原因ははっきりとわかっていませんが、月経の時に剥がれ落ちた「子宮内膜」が卵管から逆流して「卵巣」や「腹膜」「子宮の周り」などに生着して病変をつくる説が有力です。他にも様々な仮説が言われています。

チョコレートのう胞はどんな症状がおこりますか?

月経痛

「チョコレートのう胞」では、さまざまな痛みをともない、とくに月経痛があります。
子宮内膜症がベースにあるため、月経のたびに内膜症の病変は悪化します。また、月経を重ねるごとに月経痛もひどくなっていきます。

下腹部痛

子宮内膜症が悪化すると、子宮や卵巣・卵管まわりが腸や腹膜と癒着してくっついてしまいます。すると、「慢性的な腹痛」や「骨盤痛」を来したり、性交渉や排便をするときに痛みを来たす「性交痛」や「排便痛」を来します。

急激な腹痛

子宮内膜症が悪化して、「チョコレートのう胞」が大きくなると、破裂してしまうことがあります。すると非常に強い急激な腹痛が発生します。

不妊症

妊娠が成立するためには、「精子」と「卵」が受精して「受精卵」となって子宮内に着床する必要があります。子宮内膜症によって、とくに卵管まわりが癒着してくっついてしまうと、「精子」や「卵」「受精卵」の通り道が妨げられてしまい「不妊」の原因となります。

がん化

「チョコレートのう胞」から「がん化」して「卵巣がん」が発生することがあります。
とくに40歳代で「チョコレートのう胞」がある場合には「約4%」、50歳代では「約20%」が「卵巣がん」を合併していると言われています。

チョコレートのう胞はどんな治療をおこないますか?

チョコレートのう胞の治療は、痛みなどの症状の程度、病変の部位、今後の子供の希望、年齢など総合的に判断して行われます。

対症療法

チョコレートのう胞のベースにある子宮内膜症にともなう症状があれば、それを落ち着かせる「対症療法」をおこないます。
たとえば、月経痛や下腹部痛など「痛み」があれば「痛み止め」や「漢方」などで対応します。

低用量ピル

低用量ピルは月経に関係した症状をおさえる効果が期待できます。
「子宮内膜症」にともなう月経痛などの症状が改善されます。また、低用量ピルは「子宮内膜症」の病変自体を縮小し改善する効果もあります。

黄体ホルモン

月経は子宮内膜が厚くなって、それが剥がれてきて起こります。
黄体ホルモンであるプロゲスチン製剤をつかうと、子宮内膜が厚くなるのを抑え、月経は来なくなります。すると月経によって悪化する「子宮内膜症」は改善します。

偽閉経療法

閉経して月経が来なくなると子宮内膜症は改善します。GnRHアゴニストというくすりを使い、閉経とおなじようなホルモン環境にすることで「子宮内膜症」の改善を期待します。

手術

子供を希望する場合は、子宮内膜症病変のみ「摘出術」もしくは「焼灼術」がおこなわれます。「チョコレートのう胞」を認める場合は「卵巣のう胞核出術」が行われます。卵巣を温存した場合には、再発する可能性があるため、再発予防のための治療を考慮します。

子供を希望しない場合は、根本的治療となる「子宮全摘出術および両側卵巣・卵管摘出術」がおこなわれます。ただし、閉経前の年齢であれば、更年期障害や骨量やコレステロールなど将来の健康への影響を考えて正常側の卵巣を残す場合が多いです。

まとめ

  • チョコレートのう胞は「子宮内膜」が卵巣に発生することで起こります。
  • 子宮内膜症は「子宮内膜」が子宮の中以外の部位に生じる疾患です。
  • チョコレートのう胞によって「月経痛」「下腹部痛」「急激な腹痛」「不妊」「がん化」などに症状が起こります。
  • チョコレートのう胞の治療は「症状の程度」「病変の部位」「今後の子供の希望」「年齢」など総合的に判断して行われます。

「チョコレートのう胞」という可愛らしい名前が付けられていますが、
「不妊症」の原因となったり、「卵巣がん」が発生したりと、なかなか厄介な病気です。

さらに、手術をおこなって「チョコレートのう胞」を摘出しても、再発してくることが多いです。再発を予防するための治療を考慮したり、できるだけ手術回数は少なくなるように管理する上で工夫が必要です。

近年の「少子化」の影響を受けて、現代人は月経回数が多くなっています。
「チョコレートのう胞」ふくめ「子宮内膜症」は月経によって悪化します。
子宮内膜症の患者は増加しているという報告があります。
「子宮内膜症」は現代病であり、うまく付き合っていく必要があります。

この記事によって「チョコレートのう胞」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。