「卵巣がん」と診断されましたが、どのような治療がおこなわれますか?

結論ですが

卵巣がんの病変の広がり具合によって治療方針が決まります。

この記事は「病気を指摘された」女性に向けて書いています。
女性特有の病気に関して理解を深めるお手伝いができればと思っています。
この記事を読むことで「卵巣がん」についてわかります。

病院を受診して「卵巣がん」と診断された時、いろいろと説明されてよくわからないことが多いかと思います。
とくに「がん」という言葉を聞いて、ショックを受けて頭に入ってこない人は多いです。

「がん」イコール「死んでしまうもの」というイメージをする人がいますが、実は「がん」といっても進行期などによって全然ちがいます。
進行期によっては根治が可能なものから、残念ながら治療ができないものまでさまざまあります。
以前は「がんは不治の病」としてとらえられていましたが、最近では新しい治療薬も出てきてがんと十分に闘うことができています。

今回は「卵巣がんの治療」について説明していきたいと思います。

この記事のまとめ

  • 卵巣がんは、病変の広がり具合である「進行期」によって治療方針が決まります。
  • 卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
  • 卵巣がんは「手術」「化学療法」「放射線治療」などの治療がおこなわれます。

卵巣がんの病変の広がり具合を診断します。

卵巣がんと診断された場合、病変の広がり具合を診断します。卵巣がんは、「卵巣」から発生して、「卵管」や「子宮」、「腹膜」「腸管膜」などまわりの臓器に広がっていきます。
病変の広がり具合を「進行期」とよばれ、「Ⅰ期からⅣ期」まであります。卵巣がんの進行期に応じて治療方針が決まります。

卵巣がんはどんな検査をおこないますか?

内診

腟口から指を挿入して「内診」を行います。卵巣の腫れがないかどうか、そのまわりに病変が進行していないか確認します。

画像検査

エコーやMRI・CTなどの画像検査を行います。
エコーはその場ですぐにできます。卵巣が腫れていないか、腹水が貯まっていないか、卵巣の腫れ具合や血流をみて卵巣の腫れが悪そうかどうか判断します。
MRIでは、卵巣がんの病変の大きさに加えて、腹水が貯まっていないか、「子宮」「腸」などの卵巣のまわりの臓器に病変が進行していないか、骨盤内の「リンパ節」に病変が進行していないか等を確認します。
CTでは、「肺」や「肝臓」などの臓器に遠隔転移がないか、骨盤内や大動脈まわりの「リンパ節」に病変が進行していないか等も確認します。

卵巣がんでは手術によって進行期を決めます。

卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
卵巣が腫れている組織を手術前に採取することは難しいため、手術前に卵巣の組織型は決まっていないことが多いです。そのため、手術をしてはじめて組織学的に「悪性腫瘍」(卵巣がん)だとわかることが多いです。
つまり、手術前に「良性の卵巣腫瘍」だと判断していたが、手術後に組織の検査をすると「悪性腫瘍」(がん)だとわかる場合もあります。
また、基本的には卵巣がんはお腹の中に病変が広がっていくことが多いです。手術では、お腹の中を観察して病変の広がりを確認して「進行期」を決めることになります。

卵巣がんはどのような手術がおこなわれますか?

具体的な手術の方法は、基本的には「卵巣」と「卵管」とそのまわりの組織をあわせて摘出する「付属器摘出術」に加えて「子宮全摘出術」以上の手術が必要になります。つまり「子宮全摘出術および両側付属器摘出術」が基本になります。
それに加えて、「大網」や所属リンパ節である「骨盤リンパ節」「傍大動脈リンパ節」の郭清術も行われることがあります。また、「腸」や「横隔膜」「脾臓」などに病変がある場合は、それらの摘出術をあわせて行う場合があります。

妊娠を希望する場合

「両方の卵巣を摘出」したり「子宮を摘出」すると妊娠することはできなくなります。そのため、妊娠を希望する場合には、条件によりますが、腫れている側の付属器(卵巣・卵管)を摘出する手術「患側付属器摘出術」がおこなわれる場合があります。その時にあわせて「お腹の中の観察」をおこなったり、「腹水」(腹腔洗浄液)を採取したり、「大網摘出」などを行い病変の広がり具合を確認します。

手術が不可能もしくは不適切な場合

健康状態が悪いなど、手術によって命を落としてしまう可能性が高い場合があります。
そのような手術が不可能もしくは不適切な場合には、抗がん剤を使った「化学療法」や、病変に放射線を照射する「放射線治療」などの治療が行われます。
とくに「卵巣がん」は抗がん剤がとても効果がある場合があるので、手術できない場合もしくは病変を小さくして手術に持ち込みたい場合などに「化学療法」が行われます。
ただし、健康状態が非常に悪い場合には、治療をおこなわずにそのまま経過をみていくことになることもあります。

進行期などによって手術後の治療が決まります

卵巣がんでは手術によって病変の広がり「進行期」が決まります。そして、「進行期」によって手術した後の治療方針が決まります。

Ⅰ期

ⅠA期・ⅠB期であり、なおかつ細胞の悪さを反映する「Grade1」であれば、追加治療はなく初回手術のみで終了します。
ⅠC期であること、もしくは「Grade2・3」もしく「明細胞癌」という組織のタイプの場合、再発リスクが高いため、手術の後に「化学療法」をおこなうことがすすめられます。

Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期

がんが「卵巣」や「卵管」の外に広がっている状態であるため、手術の後に「化学療法」をおこなうことがすすめられます。
また、手術で病変をすべて取りきることが出来ず病変が残存していた場合には、「化学療法」をおこなった後に、出来る限り病変を取り除く「手術」が再度行われることがあります。

化学療法はどのように行われますか?

化学療法は、抗がん剤を使って「がん病変」を治療する方法です。
主に、手術を行った後に再発リスクが高いと判断された場合や、手術が出来ない場合くらい進行している場合、再発した場合などに「化学療法」が行われます。また、病変が大きすぎる場合には、手術の前に化学療法が行われる「術前化学療法」もあります。
また、卵巣がんでは、化学療法と併用して、がんの増殖に関わっている分子に作用する「分子標的治療」もあわせて行われることが多いです。

放射線治療はどのようなときに行われますか?

放射線治療は、病変に放射線を照射することで治療する方法です。
卵巣がんでは、再発したときに「痛み」や「出血」などの症状を和らげるために行われることがあります。とくに、「骨」に転移して痛む場合や「脳」に転移している場合は放射線治療が行われることが多いです。

治療後の定期フォロー

卵巣がんの治療が終了した後は、病変が再発してこないか定期的にフォローしていきます。
「内診」や「エコー検査」「腫瘍マーカー」、「CT」「MRI」などの「画像検査」などが行われます。
病変の再発を早期にみつけるために、定期的に受診して頂いて診察をおこないます。とくに治療後時間が経っていない時期に再発する確率が高いため、頻繁に受診することになります。

まとめ

卵巣がんは、病変の広がり具合である「進行期」によって治療方針が決まります。

卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。

卵巣がんは「手術」「化学療法」「放射線治療」などの治療がおこなわれます。

卵巣がんと診断されて、医師のいわれるがままに検査をおこなって、治療がおこなわれて、自分の病状がいまいちよくわからない状態の人が多いです。
自分の病気は自分で理解した上で、治療方針などを決めていくことが大切です。

以前であれば、医師がすべて治療方針など決めていくことが多かったですが、最近では患者さん自分自身で治療方針を選ぶ時代です。

どんな治療法も良い面と悪い面があります。それらをしっかりと理解して、自分自身が納得してから治療をうけるようにしましょう。
担当医に自分の治療の希望を伝えて、わからない部分は質問するようにしましょう。

この記事によって「卵巣がん」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。