結論ですが
陰部の腫れの症状が軽ければ産婦人科を、動けないほど重症であれば救急車を呼んで外傷をみてくれる医療機関を受診しましょう。
この記事は「陰部をぶつけて腫れて困っている」女性向けに書いています。
この記事を読むことで「外陰部血腫」についてわかります。
陰部をぶつけてしまって腫れてきた場合、とても痛いし、どうすればいいかわからないと思います。
そして、腫れている部位を考えると、どこの診療科にかかれば良いか迷う場合もあるかと思います。
今回は「陰部をぶつけて腫れてきた場合どうすればいいのか」について解説していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 陰部の腫れの症状は、軽症であれば産婦人科を、重症であれば救急車を呼んで外傷専門の医療機関を受診しましょう。
- 陰部の腫れがひどい場合は「骨盤骨折」、陰部の腫れが大きくなるようであれば「出血が持続している」、おしっこが出にくい場合は「尿閉」の可能性があり注意が必要である。
- 治療は、血腫が自然に吸収されるのを待つ「保存的治療」と皮膚を切開して血腫を除去する「手術」などがある。
陰部が腫れてきた場合、どの医療機関を受診すべきか?
陰部が腫れてきた場合に「どこの科を受診するべきか」に関していうと意外と難しいです。
実際に診察をしてみないとわからない部分があるので一概には言えませんが、体を動かせる程度の症状の場合は産婦人科を受診して、体を動かせないくらい痛い場合は救急車を呼んで外傷をみてくれる医療機関を受診するといいでしょう。
産婦人科では、陰部ふくめ女性器の診察には慣れていますが、外傷の診察には慣れていない場合が多いです。そこまで大きなエネルギーが加わっていない場合で、体が動かせる程度の症状であれば産婦人科で対応は可能です。ただし、クリニックでは血腫を除去する手術は厳しいので、できれば入院ができる病院の産婦人科を選んだ方が良いでしょう。
また、交通事故などによる「高エネルギー外傷」と呼ばれる場合、体が動かせないくらいの症状であれば、「骨盤骨折」など命を落としうる状態である可能性があります。救急車を呼んだ上で外傷患者を受け入れている医療機関を受診するのが良いでしょう。
外陰部血腫の診察
まずは腫れているところがどこか、腫れの大きさなどを診察します。
腫れている部分の程度によっては、陰部の奥の方の骨が折れている「骨盤骨折」の可能性があります。その場合は、レントゲンやCT検査などで「骨盤骨折」がないか確認します。
血腫が大きすぎる場合は、おしっこの出口である「尿道口」が圧迫されて狭くなってしまいます。おしっこするときに痛みを伴ったり、おしっこが出にくくなる「尿閉」の可能性があります。
また、腫れがだんだん大きくなっていく場合は、奥の方の血管から出血が持続している可能性があります。その場合は早めの手術による治療が必要となります。
外陰部血腫の原因
僕ら産婦人科医がみることが多いのは、お産の時に産道がさけてしまう「産道裂傷」に伴う「外陰部血腫」です。
分娩は出血との戦いです。産道裂傷を縫合した奥の方の血管が破綻しており出血が貯まり「血腫」をつくる場合や、胎児が出る際に産道が引き伸ばされて奥の方の血管が破綻して「血腫」をつくる場合などがあります。
また、性交渉によって腟の奥の方の血管が裂けてしまい血腫をつくるケースが稀ですが報告されています。レイプなどの性犯罪の際に外陰部血腫をつくる場合があります。
今回のエピソードみたいに、陰部を強打して血腫をつくるケースとして…
- 自転車で転んだときにサドルが陰部を強打
- 転んでしまったときに陰部を強打
- 友人とふざけて股間を蹴り上げられた
- 鉄棒で失敗して陰部を強打
- スケートボード(スケボー)の際にトリックに失敗して陰部を強打
- 細長い棒の上を歩いているときに足を踏み外して陰部を強打
などあります。
想像すると痛いですね。男の自分もシュンとしてしまいます。
陰部は急所であり、ぶつけたくないですね。
外陰部血腫の治療
外陰部血腫の治療には、自然に血腫が小さくなっていくのを待つ「保存的治療」、皮膚を切開して中の血腫を除去する手術をおこなう「手術」などがあります。
「保存的加療」は…
- 陰部の腫れが軽度
- 陰部の腫れが大きくなってこない
- おしっこがしっかりと出る
- 生活が可能
の条件であれば、自然に血腫が小さくなっていくのを待つ「保存的治療」を選択します。ただし、陰部の腫れがあると痛いと思うので「痛み止め」を使ってより快適に生活できるようサポートします。
「手術」による治療は…
- 陰部の腫れが重度
- 陰部の腫れが徐々に大きくなってくる
- おしっこが出ない
- 生活するのが困難
などあれば、皮膚を切開して中の血腫を除去する「手術」を選択します。
陰部の腫れが重度でからだを動かせない場合は「骨盤骨折」の可能性があり、整形外科領域の専門的な治療が必要になることもあります。
また、陰部の腫れが徐々に大きくなってくるようであれば、血管が破たんして奥の方で出血が続いている可能性が高いです。手術で血腫を除去する際に、出血している部分を確認して、止血する必要があります。
造影CTなどで、出血している血管がどこなのか判断できる場合は、血管内にカテーテルを入れて出血している血管を塞ぐという方法(血管造影下動脈塞栓術)をおこなう場合があります。
また、おしっこが出ない「尿閉」の場合は、おしっこの管「尿カテーテル」をいれる処置が必要となります。おしっこが出せない状況が続くと、感染をおこして「尿路感染症」を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
まとめ
陰部を強打して腫れてきた場合、外陰部血腫を疑います。軽症であれば産婦人科(できれば入院設備のある病院)を、重症であれば救急車を呼んで外傷の受け入れをしている医療機関を受診しましょう。
陰部の腫れがひどい場合は「骨盤骨折」、陰部の腫れが大きくなるようであれば「出血が持続している」、おしっこが出にくい場合は「尿閉」の可能性があり注意が必要です。
治療は、血腫が自然に吸収されるのを待つ「保存的治療」、皮膚を切開して血腫を除去する「手術」などがあります。血管内にカテーテルを入れて出血をおさえる治療をおこなう場合があります。また、腫れがひどくて尿が出にくい場合は「尿カテーテル」を入れる場合があります。
陰部をぶつけた場合は、とても痛いかと思います。
そして痛い場所が場所だけに、どの医療機関を受診すればいいのか悩むことになるでしょう。
自分の症状を見定めて、受診していただければ幸いです。
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