結論ですが
胎盤位置が低い場合には、まずは経過をみていきます。
この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
妊娠中の病気に関するさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「胎盤の位置が低い」場合についてわかります。
妊婦健診での診察で「胎盤の位置が低いねー」と言われることがあります。
- 胎盤の位置が低いといわれたがどうしよう!?
- なにか自分で出来ることはあるのですか?
- これからどうなっていくのですか?
これらの疑問にお答えします
妊娠週数が浅い場合、胎盤が実際の位置よりも低い位置にあるようにみえることがあります。
じつは、胎盤の位置が自然にあがってくることがあるため、ときに問題ないことも多いです。
ただし、本当に胎盤の位置が低く、「前置胎盤」や「低置胎盤」と診断された場合には、注意が必要なことがあります。
今回、「胎盤の位置が低い」場合について説明していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 胎盤位置が低い場合には、妊娠経過とともに自然に胎盤の位置が上がってくることがあるため、まずは経過をみていきます。
- 胎盤位置が低い場合には基本的には帝王切開になり、「癒着胎盤」「大量出血」「警告出血」などに注意が必要です。
- 胎盤位置が低い場合には、「胎盤の位置を確認する」「胎盤の癒着を確認する」「大量出血への準備をする」「管理入院をする」などの対応をします。
まずは経過をみていく
結論をいうと、胎盤の位置が低い場合には、まずは経過をみていきます。
なぜなら、妊娠経過とともに自然に胎盤の位置が上がってくることがあるからです。
妊娠中のエコー検査で、胎盤位置が低いと言われていても、週数をあけて確認すると、胎盤位置が上がってくるように見えることがあります。
これは妊娠経過とともに子宮の下の方が伸ばされるために、胎盤が上の方に移動しているようにみえるのです。これを「胎盤の上方移動」とよばれております。
なので、妊娠週数が浅いときに胎盤が低い位置にある場合には、妊娠週数をあけて確認することが多いです。
具体的には、妊娠20週から妊娠24週頃に一度、胎盤の位置を確認します。そこで胎盤が低い位置にある場合には、妊娠30週前後で再び胎盤位置を確認します。
胎盤が低いときに注意すべきこと
基本的には帝王切開になる
前置胎盤とは、胎盤が子宮の入り口近くに付いている状態のことです。胎盤が子宮の入り口を覆っていると、赤ちゃんは下から出てこれません。
仮に赤ちゃんが下から出てくる場合には、胎盤が先に剥がれることになります。胎盤は、母親から赤ちゃんに「酸素」や「栄養素」を渡すのに重要な役割をしています。
それが先に剥がれてしまうと、赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては赤ちゃんが死亡してしまう可能性があります。
「前置胎盤」の場合には帝王切開での分娩になります。なお、「低置胎盤」の場合は、医療機関によっては経腟分娩でおこなう場合があります。
癒着胎盤に注意
前置胎盤のときに注意が必要なのが「癒着胎盤」です。
「癒着胎盤」では、胎盤が子宮にがっちりとくっついてしまい、うまく剥がれないです。
無理に胎盤を剥がそうとすると、大量出血になってしまうことがあります。
とくに今までに「帝王切開術」や「子宮筋腫核出術」など子宮に対する手術をしたことがある患者で多くみとめます。
「癒着胎盤」の場合は、その場では胎盤を剥がさずに、自然に剥がれてくるのを待つことがあります。それでも剥がれてこない場合には「抗がん剤」が使われることがあります。また、癒着胎盤にともなって出血が持続する場合は、出血の根本原因である子宮を取る「子宮摘出術」が行われることもあります。
大量出血に注意
子宮の下の部分はとくに血流が豊富です。
胎盤の位置が低いと、胎盤が剥がれる際に出血多くなってしまうことがあります。
また、先ほどの「癒着胎盤」があるときには、胎盤が剥がれるときに大量出血がともなうので、事前に準備しておく必要があります。
警告出血に注意
「前置胎盤」の場合、胎盤が剥れるときの出血は注意が必要です。
胎盤は、母親から赤ちゃんに「酸素」や「栄養素」を渡すのに重要な役割をしています。
それが先に剥がれてしまうと、赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性があります。
前置胎盤において、胎盤が剥がれてくると出血をみとめ「警告出血」と呼ばれています。胎盤が剥がれて、赤ちゃんの元気がなくなってくる可能性があります。
「警告出血」と判断した場合は、状況にもよりますが赤ちゃんの元気がなくならないうちに、早めに出さなければなりません。
具体的にはどうするか?
胎盤の位置を確認する
胎盤位置が低い場合には、胎盤の位置がどの程度低いのか確認します。
具体的には、「エコー検査」や「MRI検査」などで確認します。
そこで胎盤の位置が低く、胎盤が子宮の入り口にかかっていれば「前置胎盤」、子宮入り口にかかっていないけど低い位置にある場合は「低置胎盤」と診断されます。
また、胎盤が「子宮の前側」にあるのか「子宮の後ろ側」にあるのか確認します。胎盤位置を確認することで、帝王切開のときに子宮を切開する場所をどこにするのか計画を立てることができます。
胎盤の癒着を確認する
胎盤の癒着があるかどうかを「エコー検査」や「MRI検査」などで確認します。
「癒着胎盤」では、胎盤が子宮にがっちりとくっついてしまい、うまく剥がれないです。無理に胎盤を剥がそうとすると、大量出血になってしまうことがあります。
また、胎盤が子宮の壁をこえて「膀胱」にまで癒着が及んでいる場合があります。胎盤の癒着の程度によっては、大量出血が想定されます。
帝王切開の時に赤ちゃんが出た後に、胎盤を剥がさずに子宮ごと取ってしまう「子宮摘出術」をはじめから予定する戦略をとることがあります。
大量出血への準備をする
胎盤の位置が低い場合には、子宮の下の方が血流が豊富であること、癒着胎盤の可能性があることから大量出血となることが想定されます。
大量出血に備えて…
- あらかじめ自己血をとっておくこと
- 輸血を準備しておく
- 子宮摘出術の可能性を想定しておく
- 止血のための準備する(「子宮収縮剤」「子宮内に入れる止血用のバルーン」「血管内に詰め物をするためにカテーテルを留置」など)
などの対策をします。
管理入院をする
「前置胎盤」の場合、胎盤が剥れるときの「警告出血」に注意が必要です。「警告出血」があったときに、迅速な対応ができるようにある程度の妊娠週数になったら管理入院をすることが多いです。
また、妊娠週数が浅いときに出血をみとめたときに、「警告出血」なのか判断が難しい場合があります。赤ちゃんが十分に成熟な場合には帝王切開で赤ちゃんを出しますが、赤ちゃんが未熟な場合は判断が難しいです。そのような時には、赤ちゃんの元気かどうか慎重にみながら、入院管理していくことになります。
まとめ
- 胎盤位置が低い場合には、妊娠経過とともに自然に胎盤の位置が上がってくることがあるため、まずは経過をみていきます。
- 胎盤位置が低い場合には基本的には帝王切開になり、「癒着胎盤」「大量出血」「警告出血」などに注意が必要です。
- 胎盤位置が低い場合には、「胎盤の位置を確認する」「胎盤の癒着を確認する」「大量出血への準備をする」「管理入院をする」などの対応をします。
胎盤が低いと言われても、「??」と思う人が多いです。
実際には妊婦健診で無症状で指摘されることが多いです。
また、胎盤位置が自然に上がってきて問題になることがないことの方が多いのです。
ただし、本当に胎盤の位置が低い場合には、胎盤が剥がれて赤ちゃんが亡くなってしまったり、大量出血にともなって母体が亡くなってしまう可能性のある恐ろしい病気なのです。
「前置胎盤」や「低置胎盤」と診断された場合には、担当医の指示にかならず従うようにしましょう。
この記事によって「胎盤位置が低い場合」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
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