結論ですが
喫煙をしている妊婦さんは今すぐ喫煙をやめましょう。
この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
この記事を読むことで「妊娠中の喫煙の影響」についてわかります。
喫煙をしている妊婦さんは今すぐ喫煙をやめましょう。
喫煙によって「自分自身」だけでなく「おなかの中の赤ちゃん」「まわりの人々」(受動喫煙による影響)などにも健康上の不利益をもたらします。
逆に、パートナーや両親など生活をともにしている人が喫煙している場合は「受動喫煙」の影響を受ける可能性があります。
妊娠を機会にして、パートナーや両親などには禁煙してもらいましょう。
「禁煙」が無理だとしても、しっかりと「分煙」して「受動喫煙」の影響をうけないようにしましょう。
そうとはいえ、禁煙したいと思ってもなかなか出来ないひとがいるかとおもいます。「喫煙をやめたい」と思っても実際にやめることは難しいです。
いったん喫煙をやめたと思っても、ある時つい吸ってしまうこともあります。喫煙の習慣を断ち切るためには、一生付き合わなければならないといわれています。
今回は「妊娠中の喫煙の影響」について説明していきたい思います。
この記事のまとめ
- 妊娠中の喫煙によって「母親自身」だけでなく「赤ちゃん」「まわりの人々」にも健康上の影響をもたらします。
- とくに「赤ちゃん」への喫煙の影響は将来にわたります。
- 禁煙するためにはおもに「薬物療法」「認知行動療法」の2つの治療法がありますが、妊娠中・授乳中では「認知行動療法」がメインとなります。
- 禁煙へのアプローチとして「行動変容」の5つ段階を意識して介入することが重要です。
喫煙の影響
妊娠中の喫煙によって、「母親自身」だけでなく「赤ちゃん」「まわりの人々(受動喫煙)」などにも健康上の不利益をもたらします。
たばこを吸っている「本人」だけでなく、胎盤を通じて「赤ちゃん」に影響をあたえます。また、たばこの煙の中に有害成分が含まれており、「まわりの人々」にも健康上の影響をあたえます。
喫煙者自身への影響
喫煙者はわかるかと思いますが、たばこの包装にも書かれている通り、喫煙によって健康を害するおそれがあります。
喫煙によって、肺や気管支に慢性的に炎症がおこるようになります。「肺がん」「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」になりやすくなります。
また、煙草にふくまれている有害物質によって血管の壁にダメージが加わります。すると、「血管がせまくなる」「血管がやぶれやすくなる」「血管の壁が弱くなりコブができる」など起こりやすくなります。
たとえば、心臓に栄養している血管が狭くなって詰まってしまた場合「心筋梗塞」、脳の血管が詰まった場合「脳梗塞」、脳の血管がやぶれて出血した場合「脳出血」など起こります。
また、妊娠中の場合は「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」になりやすいという報告もあります。
おなかの中の赤ちゃんへの影響
煙草の成分は、胎盤を通じて「赤ちゃん」に影響をあたえます。煙草に含まれている成分のため「流産」や「早産」のリスクが上がります。
血管を狭くする作用のある成分のため、赤ちゃんに血流が十分にいき渡らず、赤ちゃんが小さくなる「胎児発育不全」、最悪の場合は「胎児死亡」につながることもあります。
また、胎盤と子宮の壁との血流が不安定になり、赤ちゃんが産まれてくる前に胎盤が剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」につながることもあります。「常位胎盤早期剥離」は母親・赤ちゃんともに死亡してしまう可能性のあるおそろしい疾患です。
また、赤ちゃんが産まれたあとも、「喘息」「耳の疾患」「乳児突然死症候群」などなりやすいです。
さらに赤ちゃんが将来おおきくなって成人した場合、「高血圧」「糖尿病」「脂質代謝異常症」などの生活習慣病になりやすくなります。
喫煙の影響は、赤ちゃんが「胎児」「新生児」のときだけでなく「成人」になったあとも影響を与えます。
つまり、妊娠中の喫煙によって赤ちゃんの将来にわたって影響をあたえることになります。
受動喫煙の影響
喫煙の影響は吸っている人だけでなく、たばこから出てくる煙を吸ってしまうまわりの人にも影響を与えます。
受動喫煙によって、「気管支喘息」「慢性気管支炎」などの呼吸器疾患のほか、「糖尿病」「メタボリックシンドローム」「うつ病」「認知機能低下」などに影響するという報告があります。
禁煙するためには
これまで喫煙による影響をみてきました。喫煙は健康を害するおそれがあることに加えて、たばこを買うお金もかかるため、「百害あって一利なし」といわれています。
理屈ではわかっていても、なかなか喫煙を止められないのが「薬物依存」のおそろしいところです。「喫煙は体に悪いので禁煙しましょう」といわれて、すぐに禁煙できたら苦労しません。
喫煙習慣への治療として主に「薬物療法」と「認知行動療法」の2つがあります。この記事ではそれらに加えて「行動変容」という考え方について説明したいと思います。
薬物療法
喫煙にはニコチン依存による「身体的依存」と、喫煙習慣によって形成される「心理的依存」の2つの依存があります。
「身体的依存」に対しては、「ニコチン製剤」(ガム・パッチなどあり)・「バレニクリン」(飲み薬)などの「薬物療法」を用います。
ただし、妊娠中や授乳中では、赤ちゃんへの影響から「ニコチン製剤」は現時点で国内では使えないです。また、「バレニクリン」は大量投与により赤ちゃんの異常が生じたという報告があり使用注意となっています。
妊娠中や授乳中では基本的には「薬物療法」は利用できないため、「認知行動療法」が治療の中心となります。
認知行動療法
「心理的依存」に対しては、「認知行動療法」を中心にさまざまなアプローチが考案されていきます。
認知行動療法とは、「認知」(頭にうかぶ考えやイメージ)と「行動」(客観的な把握が可能な動作や行為)の側面から解決しようとする心理療法です。
行動変容
禁煙に対するアプローチはさまざまありますが、ここでは「行動変容」という考え方を紹介します。
喫煙など薬物依存を治療するにあたって、「行動変容」という考え方が重要です。喫煙習慣に対する「行動変容」、つまり「喫煙するという行動」→「喫煙しないという行動」に変えていくということになります。
「行動変容」には5つの段階があり、それぞれの段階にあったアプローチ方法をとることが効果的とされています。
1.無関心期:禁煙する気はない。喫煙という行動に対して問題意識はない。
→受容・不同意・情報提供など
喫煙者の話や思いを聞くこと、禁煙したくないという意見には同意しないこと、喫煙の健康への影響に関する情報提供をすることなどがポイントになる。
2.関心期:禁煙したいと思う。しかし、喫煙継続にも価値をみとめる。
→動機の強化
禁煙によるメリット、禁煙しない場合のデメリットを説明することがポイントになる。
3.準備期:禁煙の必要性を理解し、実際に禁煙したいと思う。
→やめ方を伝える、自信の強化
具体的な禁煙への正しい方法を伝えること、禁煙することへの自信を強化することがポイントになる。
4.実行期:禁煙をはじめて6か月未満。
→行動の強化、ほめる
効果が目にみえて現れない時期であり再発しないよう介入すること、禁煙という行動を認めてほめることがポイントです。
5.維持期:禁煙をはじめて6か月以上。
→自立をうながす
実行期に実施した取り組みを確実なものにして自立を促すこと、喫煙をしないのが「普通」と感じるようにすることがポイントです。
まとめ
妊娠中の喫煙によって「母親自身」だけでなく「赤ちゃん」「まわりの人々」にも健康上の影響をもたらします。
とくに喫煙の「赤ちゃん」への影響は将来にわたります。
禁煙するためにはおもに「薬物療法」「認知行動療法」の2つの治療法がありますが、妊娠中・授乳中では基本的に薬物療法ができないため、「認知行動療法」がメインとなります。
禁煙へのアプローチとして「行動変容」の5つ段階を意識して介入することが重要です。
まずは、喫煙のリスクをしっかりと理解し、禁煙をしたいと思うことが大切です。
喫煙者の方がこの記事を読んで、行動変容の「関心期」「準備期」そして「実行期」の段階になってくれたらありがたいです。
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