結論ですが
「胎盤の位置」「胎盤が剥がれる異常」「胎盤が剥がれない異常」などの胎盤の異常があります。
この記事は妊娠している女性に向けて書いています。
妊娠中のさまざまな悩み・疑問・不安などが解決できればとおもっています。
今回は「胎盤の異常」についての記事です。
胎盤は、母親とお腹の中の赤ちゃんとの間をつなぐ大切な構造です。
赤ちゃんは、胎盤を通じて母親から「酸素」や「栄養素」を受け取っています。
そして、「二酸化炭素」や不要になった「老廃物」を母親に受け渡しています。
「酸素」や「栄養素」は赤ちゃんが生きる上で、そして成長する上で必要なものです。胎盤は、赤ちゃんにとって命綱となっているのです。
そんな胎盤のトラブルは、赤ちゃんにとって命にかかわる問題です。
今回は「胎盤の異常」について説明していきます。
この記事のまとめ
- 胎盤は、母親とお腹の中の赤ちゃんとの間をつなぐ大切な構造です。
- 胎盤の位置の異常として、「低置胎盤」や「前置胎盤」があります。
- 胎盤が早期に剥がれる異常として、「常位胎盤早期剥離」や「慢性早剝羊水減少症候群」があります。
- 胎盤が剥がれない異常として、「癒着胎盤」などがあります。
そもそも胎盤って何ですか?
胎盤は、母親とお腹の中の赤ちゃんとの間をつなぐ大切な構造です。
胎盤を通じて、「酸素」や「栄養素」を母親から赤ちゃんに、「二酸化炭素」や「老廃物」などを赤ちゃんから母親へ移行するような物質のやり取りがおこなわれます。
赤ちゃんは自分で「酸素」や「栄養」を取り入れることが出来ないため、胎盤が赤ちゃんにとって命綱となっているのです。
なお、胎盤の中はフィルターのように隔てられているので、母親と赤ちゃんの血液が直接混じらないような構造になっています。
胎盤の異常はどんなものがありますか?
胎盤の位置の異常
胎盤が子宮の下の方に位置している異常があります。
胎盤の位置が低い場合を「低置胎盤」とよばれます。
また、胎盤の位置が低すぎて、子宮の入り口を覆うような場合を「前置胎盤」とよばれます。
胎盤が剥がれる異常
通常であれば、赤ちゃんが産まれてから、胎盤が剥がれてきます。しかし、赤ちゃんが産まれる前に胎盤が先に剥がれてしまう病気があります。
たとえば、正常位置の胎盤が急に剥がれる「常位胎盤早期剥離」、胎盤がゆっくりと剥がれる「慢性早剝羊水減少症候群」(CAOS)などがあります。
胎盤が剥がれない異常
通常であれば、赤ちゃんが産まれてから、子宮が収縮してくるとともに胎盤が剥がれてきます。そのときに胎盤が剥がれてこない場合があり、胎盤が子宮とがっちりとくっついてしまった場合を「癒着胎盤」とよばれます。
低置胎盤
低置胎盤って何ですか?
胎盤が子宮の低い位置の場合を「低置胎盤」とよばれます。
胎盤の位置が「子宮の入り口から2cm以内」の場合に位置しているときを指します。
低置胎盤の管理・治療は?
胎盤の位置が低い場合には、まずは経過をみていきます。
なぜなら、妊娠経過とともに自然に胎盤の位置が上がってくることがあるからです。
それにも関わらず低置胎盤の場合には、赤ちゃんが産まれてくるときに胎盤が妨げられる可能性があります。また、子宮の下の部分はとくに血流が豊富です。胎盤の位置が低いと、胎盤が剥がれる際に大量出血することがあります。
低置胎盤の場合には「帝王切開」での分娩になりますが、医療機関によっては「経腟分娩」でおこなうこともあります。
前置胎盤
前置胎盤って何ですか?
胎盤が低く、子宮の入り口を覆っている場合を「前置胎盤」とよばれます。
胎盤の位置が、子宮の入り口ギリギリに位置している場合を「辺縁前置胎盤」とよばれます。
前置胎盤の管理・治療は?
「前置胎盤」の場合、胎盤が剥れるときの性器出血は「警告出血」とよばれており注意が必要です。後ほど説明する「癒着胎盤」を伴っていることが多いです。
前置胎盤の場合には基本的には「帝王切開」での分娩になります。
また、子宮の下の部分は血流が豊富であり「大量出血」に備える必要があります。たとえば、「輸血製剤」や「止血の処置」を準備します。また、子宮全摘出術に移行できるような準備もおこないます。
常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離って何ですか?
「常位胎盤早期剥離」は、母体・お腹の中の赤ちゃんともに命にかかわる緊急性の高い病気です。通常は、赤ちゃんが産まれてから、胎盤が剥がれてきて出てきます。
「常位胎盤早期剥離」では、赤ちゃんが出てくる前に胎盤が剥がれてしまうために、赤ちゃんへの酸素などの供給がストップされ、赤ちゃんの具合が急に悪くなってしまいます。
常位胎盤早期剥離の症状は?
「常位胎盤早期剥離」では、胎盤が剥がれることで、急激に子宮が収縮しようとします。すると、急激な腹痛がおこったり、板のようにお腹が硬くなったり、性器出血などの症状がみられます。
常位胎盤早期剥離の管理・治療は?
胎盤が剥がれる面積が広いと、赤ちゃんが具合悪くなったり、大量出血につながります。常位胎盤早期剥離と診断された場合には、緊急帝王切開術になります。
慢性早剥羊水減少症
慢性早剥羊水減少症って何ですか?
「慢性早剥羊水減少症」(CAOS:Chronic Abruption Oligohydramnios Sequence)は、赤ちゃんが娩出される前に、胎盤がゆっくり剥がれてくる病気であり、羊水減少をともないます。
胎盤がゆっくりと剥がれることで、赤ちゃんに必要な「酸素」や「栄養素」が不足するために、赤ちゃんの具合が悪くなったり、成長が鈍くなったりします。
慢性早剥羊水減少症の症状は?
「慢性早剥羊水減少症」では、ゆっくりと胎盤が剥がれ、剥がれたときの出血が「性器出血」としてみられます。また、「お腹のハリ」や「お腹の痛み」を訴えることがあります。
胎盤が剥がれることで、赤ちゃんに必要な「酸素」や「栄養素」が不足するために、赤ちゃんのおしっこの量は少なくなり、羊水量は少なくなります。
慢性早剥羊水減少症の管理・治療は?
「慢性早剥羊水減少症」では、妊娠週数が浅い場合には、「赤ちゃんの成長具合」「赤ちゃんの元気さ具合」を評価していきながら、いつ赤ちゃんを出すべきか判断します。
胎盤が剥がれると、赤ちゃんへの「栄養」が不足するため、成長が鈍くなってしまいます。また、「酸素」が不足すると、赤ちゃんの具合が悪くなってしまいます。それらを勘案していつ赤ちゃんを出すべきか判断します。
ただし、妊娠週数が浅いほど、赤ちゃんはお腹の中で亡くなってしまったり、分娩後亡くなってしまったり、後遺症が残ってしまう可能性は高くなります。
癒着胎盤
癒着胎盤って何ですか?
「癒着胎盤」は、胎盤が子宮の壁にがっちりとくっついてしまい、うまく剥がれない状態のことです。子宮の壁を乗り越えて癒着している場合があり「穿通胎盤」とよばれます。膀胱まで癒着している場合もあえます。
とくに今までに「帝王切開術」や「子宮筋腫核出術」など子宮に対する手術をしたことがある患者で多くみとめます。
癒着胎盤の管理・治療は?
「癒着胎盤」では、胎盤が子宮にがっちりとくっついてしまい、うまく剥がれないです。無理に胎盤を剥がそうとすると、大量出血になってしまうことがあります。
「癒着胎盤」の場合は、その場では胎盤を剥がさずに、自然に剥がれてくるのを待つことがあります。それでも剥がれてこない場合には「抗がん剤」が使われることがあります。
また、癒着胎盤にともなって出血が持続する場合は、出血している子宮ごと取ってしまう「子宮摘出術」が行われる場合もあります。
まとめ
- 胎盤は、母親とお腹の中の赤ちゃんとの間をつなぐ大切な構造です。
- 胎盤の位置の異常として、「低置胎盤」や「前置胎盤」があります。
- 胎盤が早期に剥がれる異常として、「常位胎盤早期剥離」や「慢性早剝羊水減少症候群」があります。
- 胎盤が剥がれない異常として、「癒着胎盤」などがあります。
胎盤は、母親とお腹の中の赤ちゃんとの間をつなぐ大切な構造であり、赤ちゃんにとって命綱です。そして胎盤は血流が豊富な臓器であり、母体は大量出血から亡くなってしまう場合もあります。
胎盤の異常は、母子ともに命にかかわる重大な病気です。
診断されたら、担当医の指示を守るようにしましょう。
そして、産婦人科医は適切に診断するとともに、適切な対応が必要となります。
この記事によって「胎盤の異常」の理解が深まり、一人でも多くの人の役に立つことを願っています。
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