結論ですが
妊娠のC型肝炎の検査が陽性の場合、「C型肝炎の活動性」「妊婦自身の肝臓機能」を検査し、「赤ちゃんへの感染予防」を行います。
この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
妊娠中のさまざまな疑問、不安などが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「妊娠中のC型肝炎」についてわかります。
妊婦健診では、血液検査でC型肝炎の抗体の検査をおこないます。その検査結果でひっかかってしまった場合について説明します。
C型肝炎ウイルスの感染がわかった場合には「妊婦自身の肝臓が大丈夫か確認する」「赤ちゃんへの感染を予防する」という2つの視点が大事になってきます。
今回は、「妊娠中のC型肝炎」について説明していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 妊娠初期のC型肝炎の検査である「HCV抗体」が陽性の場合、追加検査をしてC型肝炎ウイルス量をしらべます。
- 妊婦さん自身の肝臓が大丈夫なのか専門医に診察してもらいます。
- C型肝炎の母子感染予防のために、帝王切開を選択するかは担当医との相談が必要です。また、授乳を制限する必要はないです。
C型肝炎ウイルスの感染の妊婦の対応
C型肝炎ウイルスの感染がわかった場合には、「妊婦自身の肝臓が大丈夫か確認すること」「赤ちゃんへの感染を予防すること」という2つの視点が大事になってきます。
そもそもC型肝炎ウイルスって何なのか、どんな検査をおこなっているのか、どんな追加の検査をおこなうのか、検査が陽性だった場合どのように対応するのかという順でみていきます。
C型肝炎ウイルスって何ですか?
C型肝炎ウイルスは感染すると肝臓に炎症がおこします。
感染が継続すると、「慢性肝炎」→「肝硬変」→「肝がん」という変化をおこします。無治療で放置しておくと「肝がん」になってしまう可能性があるため、しっかりと対応することが大切です。
肝臓は沈黙の臓器といわれ、多少のダメージをうけても症状があらわれにくいことが多いです。症状はないけど、検査をしてはじめて肝臓の異常がわかることが多いです。
ちなみに、急性肝炎などの肝機能障害によって、「全身倦怠感」「食欲不振」「黄疸」などの症状が現れます。重症化して肝機能不全になると、「腹水」がたまったり、「意識障害」などの症状が出てきます。
妊婦健診で行われるC型肝炎の検査は何ですか?
妊娠初期に妊婦さん全員に血液検査で「HCV抗体」というC型肝炎の検査が行われます。
「HCV抗体」が陽性の場合は、C型肝炎ウイルスに以前にかかったことがあるだけという可能性「既感染」、C型肝炎に今現在も感染している可能性「持続感染」の2つの可能性があります。それらを調べるために、血液中のC型肝炎ウイルス量や活動性を調べます。
C型肝炎は一本鎖RNAウイルスであり、「HCV-RNA定量検査」というものをおこなったり、「ALT」「AST」などの肝機能検査もおこないます。
「HCV-RNA定量検査」の結果が陰性の場合は、母子感染のリスクはないです。
ただし、「HCV-RNA量」が変動することもあるので、妊娠後期に再検査をおこなったり、念のため生まれた赤ちゃんのフォローもおこなわれます。
HCV-RNA定量検査で検出された場合は、C型肝炎の持続感染の可能性があり「妊婦自身の肝臓が大丈夫か確認すること」「赤ちゃんへの感染を予防すること」が重要です。
妊婦自身の肝臓の評価
C型肝炎ウイルスの感染がわかった場合には、消化器内科(とくに肝臓を専門としている専門医)に紹介して診察していただきます。必要があれば妊娠中でも治療をすることが重要です。
妊婦自身の治療でC型肝炎の病状をおさえることが、赤ちゃんへの感染予防にもつながります。
C型肝炎の赤ちゃんの感染予防
感染経路
成人におけるC型肝炎ウイルスの感染経路は、血液や性行為を介して感染する「水平感染」がほとんどです。とくに「針の使いまわし」や、「輸血」による血液を介する感染が多いです。
一方、赤ちゃんにおけるC型肝炎ウイルスの感染経路は、産道感染による「垂直感染」がほとんどです。ごくまれに胎内で胎盤を通じた感染がおこることが報告されています。また、赤ちゃんが産まれたあとに血液などを介して感染する「水平感染」の可能性もあります。
授乳はどうするか?
HCV-RNA定量検査で検出された場合でも、母子感染予防のために母乳栄養を制限する必要はないです。母乳中に万が一血液が混在して感染の心配があるという人がいるかとおもいます。
しかし、母乳保育と母子感染率には関連がないという報告があり、母子感染予防のために母乳栄養を制限する必要はないです。母乳栄養は赤ちゃんにとってさまざまなメリットがあります。不必要な制限をおこなう必要はありません。
分娩方法はどうするか?
分娩方法を「帝王切開術」にするか「経腟分娩」にするかは賛否両論あるところです。
帝王切開によってC型肝炎ウイルスの母子感染を下げる可能性は示唆されています。しかし、海外での大規模研究では帝王切開によってC型肝炎ウイルスの母子感染を下げる可能性が否定されていること、帝王切開によってC型肝炎ウイルスの母子感染を完全に防げないこと、C型肝炎ウイルスの母子感染を予防する方法が確立されていないことなどから、分娩方法を決めるには相談が必要です。
実際には「帝王切開術によるリスク」と、「赤ちゃんにC型肝炎ウイルスが感染した場合の経過」を考慮したうえで相談することになります。
「帝王切開術によるリスク」は、出血・感染・臓器損傷など手術リスク、反復帝王切開の前置・癒着胎盤、子宮破裂リスクなどあります。
「赤ちゃんにC型肝炎ウイルスが感染した場合の経過」は、3-4歳までにHCV-RNAが自然消失しやすいこと、小児期の肝病変の進行はおだやかであること、小児期のC型慢性肝炎の治療効果が高いことなどの特徴があります。
分娩方法を「帝王切開術」と「経腟分娩」のいずれを選んだ場合も、産まれた赤ちゃんのフォローアップはおこなう流れになります。
まとめ
妊娠初期のC型肝炎の検査である「HCV抗体」が陽性の場合、C型肝炎ウイルス量「HCV-RNA定量検査」や「肝機能」など追加検査を行います。
「HCV-RNA定量検査」で検出された場合は、妊婦さん自身の肝臓が大丈夫なのか専門医に診察してもらいます。必要があれば妊娠中でも治療をおこなうことがあります。
C型肝炎の母子感染予防のために、帝王切開を選択するかは担当医との相談が必要です。なお、授乳を制限する必要はないです。
妊婦健診では様々な検査がおこなわれます。
今まで健康で病院を受診したことのない人の場合、検査がたくさんで驚くかと思います。そして、検査でひっかかってしまった場合、それが何を意味しているのかその場で理解するのはかなり難しいかと思います。
妊娠中の場合はとくに、妊婦自身の健康にくわえて、赤ちゃんに影響をあたえるもの、妊娠・分娩経過に影響することも検査することになるので、検査自体も多くなりますし、理解するのも大変になります。
とはいえ、自分自身だけでなく赤ちゃんを守る意味でも、検査がひっかかった場合にはしっかりと理解するようにしましょう。
この記事によって、「C型肝炎」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
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