妊婦健診で血圧が高いといわれました【妊娠高血圧症候群】

 

結論ですが

妊娠高血圧症候群の場合、高血圧だけでなく危険な状態が隠れていることがあるため、かならず医師の指示を守りましょう

この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
この記事を読むことで「妊娠高血圧症候群」についてわかります。

毎回の妊婦健診で「血圧測定」をしたり「尿検査」をおこないます。
血圧の上昇がないか、蛋白尿がないか確認することによって「妊娠高血圧症候群」でないか判断しています。

「妊娠高血圧症候群」とは、名前の通り妊娠経過とともに血圧が上昇してくる病気です。
この病気はおそろしいことに、ただ血圧が上昇してくるだけでなく、母子ともに状態を悪化させる可能性のある状態が起ってくることがあります。
自覚症状がなく水面下に進行してくる病態も含まれており、気が付いたら重症化していることもあり注意が必要です。

今回、そんな「妊娠高血圧症候群」について説明していきます。 

この記事のまとめ

  • 妊婦健診で血圧が高い場合は「妊娠高血圧症候群」を考えます。
  • 妊娠高血圧症候群は血圧の上昇だけでなく、母子ともに影響をあたえる病態がかくれていることがあるため注意が必要です。
  • 妊娠高血圧症候群の一番の治療は「妊娠を終わらせること」です。
  • 患者さん自身で出来ることは、血圧変化や自覚症状に注意すること、血圧を上げない食事を心がけることです。

妊娠高血圧症候群の高血圧の影響

妊娠高血圧症候群では血圧が高くなります。血圧が高くなるとどうなるでしょう?
血圧が高くなりすぎると、血管がやぶけてしまうことがあります。たとえば、脳の血管であれば、「脳出血」をきたして「意識障害」「けいれん発作」などがおこります。
また、血圧が高いと心臓に負担がかかります。負荷が強すぎると「心不全」になってしまい、肺に水がたまり「呼吸苦」をきたしたり「全身のむくみ」をきたします。

妊娠高血圧症候群は「危険な病態」に注意

妊娠高血圧症候群は血圧の上昇だけでなく、母子ともに影響をあたえる病態がかくれていることがあるため注意が必要です。

子癇

たとえば、「子癇」(しかん)という原因不明の「けいれん発作」がおこります。「視野障害」「意識障害」などの症状をきたし、「呼吸困難」から最悪死亡してしまうことがあります。

常位胎盤早期剝離

また、「常位胎盤早期剝離」という赤ちゃんが産まれてくる前に胎盤が剥がれてしまうことがあります。
胎盤は、母親から赤ちゃんに必要な「酸素」や「栄養」などを送る役割をしています。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんは酸素不足から具合が悪くなってしまい、最悪死亡することがあります。

DIC

さらに、「DIC」という血液の固まりやすさの異常がおこります。血液のかたまりである「血栓」ができたり、出血しやすい状態になったりします。とくに肺の血管に血栓がつまった場合、命をおとす可能性があります。

その他

他にも、「HELLP症候群」(肝機能上昇・血小板低下・溶血性貧血などをきたす)「妊娠性脂肪肝」「急性腎不全」「重症な蛋白尿」などさまざまな危険な病態をきたすことがあります。
ときに重症化し、最悪な場合は母児ともに死亡してしまうケースもあります。

妊娠高血圧症候群の治療

一番の治療はターミネーション

妊娠高血圧症候群の治療は「妊娠を終わらせること」であり「ターミネーション」といわれています。妊娠高血圧症候群は妊娠経過とともに悪化してくる病気であるため「妊娠を終わらせること」つまり「ターミネーション」が一番の治療になります。
ただし、妊娠週数が浅い場合には赤ちゃんの未熟性の問題も考慮しなければならないので、「ターミネーション」するタイミングはしっかりと考えなくてはいけません。実際には「赤ちゃんの未熟性」と「妊娠高血圧症候群の重症度」を天秤にかけたうえで「ターミネーション」するかを決めることになります。
ターミネーションの方法は、緊急性が高く、経腟分娩で時間がかかりそうであれば、「帝王切開術」を選択します。時間的猶予があれば、誘発分娩による「経腟分娩」を選択します。

血圧のコントロール

妊娠高血圧症候群の病態がおちついていて妊娠週数が浅い場合には、「血圧を下げる薬」を使って、妊娠週数を稼いでいくことになります。
血圧を下げるくすりは、妊娠中でも安全につかえるものを選択します。飲み薬や点滴のくすりがあります。ごく軽度の妊娠高血圧症候群では入院でなく外来で管理することもあります。 

食事

妊娠高血圧症候群の場合は、血圧を上げない食事を心がけることが大切です。
食事はカロリーをコントロールした食事をします。目標カロリーは担当の医師や栄養士さんと相談しながら決めます。また、塩分のとりすぎは血圧を上昇させてしまうため、塩分を抑えた食事を心がけます。

自覚症状に注意すること

なお、妊娠高血圧症候群が悪化してくるとさまざまな症状をきたします。
とくに「頭痛」「目の前がチカチカする感じ」「吐き気」「みぞおちの痛み」「むくみ」などの自覚症状には注意が必要であり、これらの症状があった場合は、担当医に伝えるようにしましょう。また、「血圧上昇」「蛋白尿の悪化」「体重増加」などに注意して妊娠高血圧症候群が悪化していないか判断します。
患者さん自身で出来ることは、「血圧変化」や「自覚症状」に注意すること、さきほど説明した「血圧を上げない食事」を心がけることなどあります。

まとめ

妊婦健診で血圧が高い場合は「妊娠高血圧症候群」を考えます。

妊娠高血圧症候群は血圧の上昇だけでなく、母子ともに影響をあたえる病態がかくれていることがあるため注意が必要です。

妊娠高血圧症候群の一番の治療は「妊娠を終わらせること」です。

患者さん自身で出来ることは、血圧変化や自覚症状に注意すること、血圧を上げない食事を心がけることです。

「妊娠高血圧症候群」は、ただ血圧が高いだけでなく、様々な危険な病態が隠れている可能性のあるこわい病気です。
血圧が高く「妊娠高血圧症候群」と診断された場合には、しっかりと医師の指示を守ることが大切です。
そして、自覚症状があった場合には、妊娠高血圧症候群が悪化してきている可能性があるため、かならず担当の医師に伝えましょう。

妊娠高血圧症候群がおこっても、適切な対応で母子ともに安全にお産がおわることを願っています。

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