結論ですが
卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
この記事は「病気を指摘された」女性に向けて書いています。
女性特有の病気に関して理解を深めるお手伝いができればと思っています。
この記事を読むことで「卵巣がん」についてわかります。
病院を受診して「卵巣がん」と診断された時、いろいろと説明されてよくわからないことが多いかと思います。
とくに「がん」という言葉を聞いて、ショックを受けて頭に入ってこない人は多いです。
さらに、実際に「卵巣がんの手術をおこなう」となったときに、あらかじめ卵巣がんの手術について知識がないと、その場で理解するのは大変だと思います。
今回は「卵巣がんの手術」について説明していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
- 「子宮全摘出術および両側付属器摘出術・大網切除術」という基本術式に加えて、「骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節の郭清術」、また病変がある場合は「腸」や「横隔膜」「脾臓」など摘出術をあわせて行われます。
- 卵巣がんという組織学的に診断するために「試験開腹・サンプリング」「腹水検査」「術中迅速病理検査」などの戦略があります。また、病変が大きすぎる場合やまわりの臓器とくっついていて摘出することが困難と想定される場合には、「術前化学療法」という戦略があります。
卵巣がんでは手術によって進行期が決まります
卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
卵巣が腫れている組織を手術前に採取することは難しいため、手術前に卵巣の組織型は決まっていないことが多いです。そのため、手術をしてはじめて組織学的に「悪性腫瘍」(卵巣がん)だとわかることが多いです。
つまり、手術前に「良性の卵巣腫瘍」だと判断していたが、手術後に組織の検査をすると「悪性腫瘍」(がん)だとわかる場合もあります。
また、基本的には卵巣がんはお腹の中に病変が広がっていくことが多いです。手術では、お腹の中を観察して病変の広がりを確認して「進行期」を決めることになります。
卵巣がんはどのような手術がおこなわれますか?
具体的な手術の方法は、基本的には「卵巣」と「卵管」とそのまわりの組織をあわせて摘出する「付属器摘出術」に加えて「子宮全摘出術」以上の手術が必要になります。つまり「子宮全摘出術および両側付属器摘出術」が基本になります。
それに加えて、「大網」や所属リンパ節である「骨盤リンパ節」「傍大動脈リンパ節」の郭清術も行われることがあります。また、「腸」や「横隔膜」「脾臓」などに病変がある場合は、それらの摘出術をあわせて行う場合があります。
妊娠を希望する場合
「両方の卵巣を摘出」したり「子宮を摘出」すると妊娠することはできなくなります。そのため、妊娠を希望する場合には、条件によりますが、腫れている側の付属器(卵巣・卵管)を摘出する手術「患側付属器摘出術」がおこなわれる場合があります。その時にあわせて「お腹の中の観察」をおこなったり、「腹水」(腹腔洗浄液)を採取したり、「大網摘出」などを行い病変の広がり具合を確認します。
手術が不可能もしくは不適切な場合
健康状態が悪いなど、手術によって命を落としてしまう可能性が高い場合があります。
そのような手術が不可能もしくは不適切な場合には、抗がん剤を使った「化学療法」や、病変に放射線を照射する「放射線治療」などの治療が行われます。
とくに「卵巣がん」は抗がん剤がとても効果がある場合があるので、手術できない場合もしくは病変を小さくして手術に持ち込みたい場合などに「化学療法」が行われます。
ただし、健康状態が非常に悪い場合には、治療をおこなわずにそのまま経過をみていくことになることもあります。
手術戦略
試験開腹・サンプリング
基本的に卵巣が腫れている組織を手術前に採取して検査することは難しいです。「卵巣腫瘍の組織検査をいかにおこなうか」ということが課題になることが多いです。
そこで、試験開腹手術をおこなって卵巣の腫れが悪性腫瘍(がん)なのか判断することになります。試験開腹手術で、卵巣腫瘍の組織型を確認することに加えて、病変がどのくらいお腹の中に広がっているかを確認します。以前は開腹手術が多かったですが、最近は体への負担の少ない「腹腔鏡」でおこなう場合が多いです。術後回復が早く、卵巣がんの診断がついたらすぐに他の治療にうつることができます。
腹水検査
基本的に卵巣が腫れている組織を手術前に採取して検査することは難しいです。
しかし、腹水が大量にたまっている場合は、腹水を採取してその中に「がん細胞」が含まれているかどうか検査することができます。
腹水の中に「がん細胞」が含まれていれば悪性腫瘍(がん)と確定できます。
しかし、卵巣がんであっても、腹水の中に「がん細胞」が含まれていない場合もあります。つまり、腹水の中に「がん細胞」が含まれいなくても、悪性腫瘍(がん)が否定できるわけではないです。
術前化学療法
卵巣がんの病変が大きすぎている場合やまわりの臓器とくっついていて摘出することが困難と想定される場合には、手術前に化学療法をおこなわれます。
手術前に化学療法をおこなわれることによって、病変を小さくして、摘出しやすい状態に持ち込みます。
ここで「卵巣がん」と診断するために「卵巣腫瘍の組織検査をいかにおこなうか」ということが課題になります。さきほど説明した「試験開腹」や「腹水検査」で、「悪性腫瘍」(がん)だと診断してから術前化学療法が行われることが多いです。
術中迅速病理検査
手術前に卵巣が腫れている組織を検査することは難しいです。「卵巣腫瘍の組織検査をいかにおこなうか」ということが課題になります。
そのため、手術中に卵巣腫瘍を摘出し、組織の検査に提出して、病理検査をおこなう「術中迅速病理検査」がおこなわれます。それによって、卵巣腫瘍が「良性」か「境界悪性」か「悪性」か手術中にわかります。そして、その結果に応じた手術がおこなわれることになります。
ただし、医療施設によっては「術中迅速病理検査」を行うことができないところもあります。
まとめ
卵巣がんでは「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
「子宮全摘出術および両側付属器摘出術・大網切除術」という基本術式に加えて、「骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節の郭清術」、また病変がある場合は「腸」や「横隔膜」「脾臓」など摘出術をあわせて行われます。
卵巣がんという組織学的に診断するために「試験開腹・サンプリング」「腹水検査」「術中迅速病理検査」などの戦略があります。また、病変が大きすぎる場合やまわりの臓器とくっついていて摘出することが困難と想定される場合には、「術前化学療法」という戦略があります。
卵巣がんと診断されて、医師のいわれるがままに検査をおこなって、治療がおこなわれて、自分の病状がいまいちよくわからない状態の人が多いです。
自分の病気は自分で理解した上で、治療方針などを決めていくことが大切です。
以前であれば、医師がすべて治療方針など決めていくことが多かったですが、最近では患者さん自分自身で治療方針を選ぶ時代です。
どんな治療法も良い面と悪い面があります。それらをしっかりと理解して、自分自身が納得してから手術ふくめて治療をうけるようにしましょう。
担当医に自分の治療の希望を伝えて、わからない部分は質問するようにしましょう。
この記事によって「卵巣がんの手術」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
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