「卵巣がん」ってどんな病気ですか?

結論ですが

卵巣がんは「卵巣に悪性腫瘍ができる状態」のことです。

この記事は「健康に関心のある」女性に向けて書いています。
女性特有の病気に関して理解を深めるお手伝いができればと思っています。
この記事を読むことで「卵巣がん」についてわかります。

たとえば

  • お腹が痛い、、
  • お腹が圧迫される感じがする、、
  • おしっこが近い感じがする、、

などの症状があった場合は自分は婦人科の病気かもしれない!?と心配になって受診すると思います。
今回説明する「卵巣がん」では初期にはほとんど症状がないことが多いことが特徴です。なので、症状が出てから診察を受けると、病変が進行している状態だとわかることが多いです。

今回はそんな「卵巣がん」について説明していきたいと思います。

この記事のまとめ

  • 卵巣がんは「卵巣に悪性腫瘍ができる状態」のことです。
  • 卵巣がんは「内診」や「エコー」「CT」「MRI」などの「画像検査」がおこなわれます。
  • 卵巣がんは「手術」「化学療法」「放射線治療」などの治療法があります。「進行期」や「妊娠の希望」「健康状態」「病変の大きさ」「組織のタイプ」などによって治療方針が決まります。

卵巣がんはどんな病気ですか?

卵巣がんは、「卵巣に悪性腫瘍ができる状態」のことです。
卵巣はこどもを作るポテンシャルのある臓器であり、卵巣からは様々な組織が発生します。また、卵巣腫瘍には悪性度に応じて「良性」「境界悪性」「悪性」の3つに分けられます。そのうち、悪性に分類される組織型をみとめた場合、「卵巣の悪性腫瘍」つまり「卵巣がん」と診断されます。

卵巣がんはどんな症状がおこりますか?

卵巣がんは、早期には自覚症状がほとんどないことが多いです。はじめのうちは卵巣がんに気づかないで、進行がんになってはじめて卵巣がんが見つかる場合が多いです。そのため、卵巣がんは「サイレントキラー」ともよばれています。
卵巣がんが進行すると、お腹が圧迫されて「腹部膨満感」、膀胱が圧迫されて「頻尿」、また卵巣腫瘍が破裂したりねじれると「腹痛」などの症状が起こります。

卵巣がんはどんな検査をおこないますか?

内診

腟口から指を挿入して「内診」を行います。卵巣の腫れがないかどうか、そのまわりに病変が進行していないか確認します。

画像検査

エコーやMRI・CTなどの画像検査を行います。
エコーはその場ですぐにできます。卵巣が腫れていないか、腹水が貯まっていないか、卵巣の腫れ具合や血流をみて卵巣の腫れが悪そうかどうか判断します。
MRIでは、卵巣がんの病変の大きさに加えて、腹水が貯まっていないか、「子宮」「腸」などの卵巣のまわりの臓器に病変が進行していないか、骨盤内の「リンパ節」に病変が進行していないか等を確認します。
CTでは、「肺」や「肝臓」などの臓器に遠隔転移がないか、骨盤内や大動脈まわりの「リンパ節」に病変が進行していないか等も確認します。

卵巣がんはどんな治療をおこないますか?

卵巣腫れている組織を手術前に採取することは難しいため、手術前に卵巣の組織型は決まっていないことが多いです。そのため、手術をしてはじめて組織学的に「悪性腫瘍」(卵巣がん)だとわかることが多いです。
卵巣がんは、病変の広がり(進行期)によって治療法は決まります。また、「妊娠の希望」「健康状態」「病変の大きさ」「想定される悪性度」などによって、具体的な治療方針を決めていくことになります。

手術

卵巣がんでは、「進行期を決めること」「病変をできるだけ除去すること」を目的に手術がおこなわれます。
具体的な手術の方法は、基本的には「卵巣」と「卵管」とそのまわりの組織をあわせて摘出する「付属器摘出術」に加えて「子宮全摘出術」以上の手術が必要になります。つまり「子宮全摘出術および両側付属器摘出術」が基本になります。
それに加えて、「大網」や所属リンパ節である「骨盤リンパ節」「傍大動脈リンパ節」の郭清術も行われることがあります。また、「腸」や「横隔膜」「脾臓」などに病変がある場合は、それらの摘出術をあわせて行う場合があります。

化学療法

化学療法は、抗がん剤を使って「がん病変」を治療する方法です。
主に、手術を行った後に術後再発リスクが高いと判断された場合や、手術が出来ない場合くらい進行している場合、再発した場合などに「化学療法」が行われます。また、病変が大きすぎる場合には、手術の前に化学療法が行われる「術前化学療法」こともあります。
また、卵巣がんでは、化学療法と併用して、がんの増殖に関わっている分子に作用する「分子標的治療」もあわせて行われることが多いです。

放射線治療

放射線治療は、病変に放射線を照射することで治療する方法です。
卵巣がんでは、再発したときに「痛み」や「出血」などの症状を和らげるために行われることがあります。とくに、「骨」に転移して痛む場合や「脳」に転移している場合は放射線治療が行われることが多いです。

妊娠を希望する場合

「両方の卵巣を摘出」したり「子宮を摘出」すると妊娠することはできなくなります。そのため、妊娠を希望する場合には、条件によりますが、腫れている側の付属器(卵巣・卵管)を摘出する手術「患側付属器摘出術」がおこなわれる場合があります。その時にあわせて「お腹の中の観察」をおこなったり、「腹水」(腹腔洗浄液)を採取したり、「大網摘出」などを行い病変の広がり具合を確認します。

卵巣がんになりやすい人は?

卵巣がんは、組織の種類によって好発する年齢は違います。
たとえば、「胚細胞性腫瘍」では10歳-20歳代の若年女性に好発し、「表層上皮性腫瘍」や「間質性腫瘍」では40歳-60歳代の閉経前後の女性に好発します。
また、「食の欧米化」「肥満」「ホルモン補充療法」「不妊」などが卵巣がんのリスク因子となります。なお、「出産経験がないこと」「排卵誘発剤の使用」などによって排卵回数が多くなると、卵巣がんのリスクが上がります。
さらに、「卵巣子宮内膜症性のう胞」(チョコレートのう胞)という良性腫瘍から卵巣がんが発生することが知られています。

卵巣がんを予防するためには?

結論を言うと有効な予防法というものは残念ながらありません。
「エコー」と「腫瘍マーカー」で卵巣がんを早期発見できるのでないかという研究はありますが、残念ながら有効性は確認されていません。
ただし、子宮のがん検診の時に診察のついでにエコーを受けることはすすめています。
また、「腹部膨満感」や「腹痛」などの症状があれば早めに受診するようにしましょう。卵巣がんによる症状であれば、早めに受診することで「がんの早期発見・早期治療」につながります。

まとめ

卵巣がんは「卵巣に悪性腫瘍ができる状態」のことです。

卵巣がんは「内診」や「エコー」「CT」「MRI」などの「画像検査」がおこなわれます。

卵巣がんは「手術」「化学療法」「放射線治療」などの治療法があります。「進行期」や「妊娠の希望」「健康状態」「病変の大きさ」「組織のタイプ」などによって治療方針が決まります。

婦人科の受診は、ためらわれる人が多いかと思います。
女性のデリケートな部位の診察になるので、受診のハードルは高いかと思います。
ただし、がんの場合には気がついたときには手遅れになってしまうこともあります。
気になる症状があるときには、勇気をもって婦人科を受診しましょう。婦人科は困った人の味方です。

この記事によって「卵巣がん」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。