妊娠していますが出血しました【妊娠中後期の性器出血】

結論ですが

妊娠中に性器出血した場合は、かかりつけに受診を相談しましょう。

この記事は「妊娠中の女性」に向けて書いています。
妊娠中の症状に関するさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「妊娠中の性器出血」についてわかります。

ふと下着をみると、出血が付着していたら驚いてしまうかと思います。
妊娠すると生理は止まります。
生理が止まるため、妊娠している時は分娩まで出血しないで過ごすことになります。

妊娠中に出血があった場合

  • 赤ちゃんが大変なことになっているのでないか
  • お腹も痛いし心配
  • このまま出血が止まらなかったらどうしよう

などとても不安になるかと思います。
妊娠中期・後期の出血は、妊娠初期の出血の原因と少しちがう視点が必要です。
今回は、「妊娠中後期の性器出血」について説明していきたいと思います。

この記事のまとめ

  • 妊娠中後期の性器出血は「胎盤が剥がれるときの出血」「子宮の入り口が開いてくるときの出血」にとくに注意が必要です。
  • 「常位胎盤早期剥離」や「前置胎盤の警告出血」は緊急事態であり、赤ちゃんを早く出す必要があります。
  • 「切迫流産」「切迫早産」は、安静とハリ止めのくすりを使用して治療管理します。

性器出血の場合は、かかりつけに受診を相談しましょう

妊娠中の性器出血があるときには、かかりつけに受診を相談しましょう。
性器出血では、とくに「胎盤が剥がれるときの出血」「子宮の入り口が開いてくるときの出血」には注意が必要です。
胎盤は、赤ちゃんに「酸素」や「栄養素」を母親から渡すのに重要な役割をしています。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性があります。
また、子宮の入り口が開いてくると出血を来します。妊娠週数が満期であれば、分娩が近いという徴候として「産徴」(おしるし)として認められます。
ただし、週数が浅いうちに子宮の入り口が開いてくると、「流産」で赤ちゃんが流れてしまったり、「早産」として未熟な状態で赤ちゃんが産まれてしまうことにつながります。
性器出血があるときには、かかりつけに受診を相談するようにしましょう。

どこから出血しているのか確認する

下着に出血が付着した場合は、まずはどこから出血しているのか確認します。
「腟口」「尿道口」「肛門」の3つの穴が下着と接しています。
下着に出血が付く場合は、その3つの穴のどこから出血しているのか確認することが重要です。
腟口から出血を認める場合は「性器出血」、おしっこに出血をみとめる場合は「血尿」、便に出血をみとめる場合は「血便」と言われます。
つまり、下着に出血が付いていた場合は「性器出血」「血尿」「血便」のいずれか評価することが大切です。

出血の原因

「胎盤が剥がれるときの出血」

常位胎盤早期剥離

妊娠中の性器出血で、一番注意するのが「胎盤が剥れるときの出血」です。
胎盤は、母親から赤ちゃんに「酸素」や「栄養素」を渡すのに重要な役割をしています。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性があります。 
「常位胎盤早期剥離」は緊急事態です。診断したら、すぐに赤ちゃんを出さなければなりません。すぐに下から産まれそうであれば「吸引分娩」「鉗子分娩」などをおこなって、少しでも早く赤ちゃんを出します。下から産まれるのに時間がかかりそうであれば「緊急帝王切開」となります。

前置胎盤

「前置胎盤」とは、胎盤が子宮の入り口近くに付いている状態のことです。
胎盤が子宮の入り口を覆うと、基本的には赤ちゃんは下から出てこれません。
仮に赤ちゃんが下から出てくる場合には、胎盤が先に剥がれることになります。赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、場合によっては死亡してしまう可能性もあります。
「前置胎盤」と診断したら、帝王切開での分娩になります。前置胎盤で、胎盤が剥がれてくると出血しますが「警告出血」と呼ばれています。胎盤が剥がれて、赤ちゃんの元気がなくなってくる可能性があります。
状況にもよりますが「警告出血」による出血をみとめる場合は、早めに赤ちゃんを出さなければなりません。また、「前置胎盤」では「癒着胎盤」をともなっている場合があります。胎盤が剥がれるときに大量出血を来す可能性があり注意が必要です。
「胎盤が全く剥がれない」「子宮からの出血が止まらない」状況によっては、子宮を摘出する手術が必要になる場合もあります。

「子宮の入り口が開いてくるときの出血」

切迫流産

子宮入り口が開いてきた時に出血がおこります。
それが進行して、陣痛がともなうようになってくると、赤ちゃんが出てきます。
「妊娠22週未満(21週6日まで)」に赤ちゃんが産まれてしまった場合は「流産」となります。残念ながら、赤ちゃんは一人で生存することができないとされているため、そのまま自然に経過をみていくこになります。なお、流産になりそうな状態のことを「切迫流産」といいます。

切迫早産

子宮入り口が開いてきた時に出血がおこり、その後に陣痛がともない赤ちゃんが出てきます。
「妊娠22週~37週未満(36週6日まで)」に赤ちゃんが産まれた場合は「早産」となります。妊娠週数によりますが、赤ちゃんの臓器が未熟な場合には医療介入が必要となります。
なお、「早産」になりそうな状態のことを「切迫早産」といいます。
「流産」や「早産」にならないようにするため、「切迫流産」や「切迫早産」を適切に診断して治療管理していきます。
「切迫流産」「切迫早産」では、安静とハリ止めの薬で経過をみます。症状がひどい場合は、入院管理が必要になります。

その他

また、子宮入り口に「子宮頸管ポリープ」があると、こすれて出血する場合があります。また、子宮の入り口は出血しやすい状態になっており運動などによる「擦過による出血」がおこります。
また、「性器出血」ではなく、じつは「血尿」や「血便」の場合もあります。とくに妊娠中は「痔」による出血が多いです。

性器出血はどのような検査をおこないますか?

視診

陰部を観察して出血している部分を確認します。表面に何か出血を来すような病変がないか見ていきます。
出血の出ている部分はどこなのか、どのくらいの量が出血しているのか確認します。

腟鏡診

腟鏡(クスコ)という器械を用いて、腟内や子宮の入り口付近を観察します。
どこから出血しているのかを見て評価します。

エコー

腟口からエコーの器械を挿入したり、お腹の上からエコーを当てて検査します。
「子宮の入り口の長さ」「胎盤の位置」「胎盤が剥がれていないか」「赤ちゃんの元気さ具合」「羊水」などを評価します。
とくに、前置胎盤・常位胎盤早期剥離を評価するのに「胎盤の位置」「胎盤の後ろ側に血のかたまりがないか」などをみていきます。
切迫流産・切迫早産を評価するのに「子宮の入り口の長さ」(頸管長)や「子宮の入り口の形」などをみていきます。

モニター

「赤ちゃんが元気かどうか」「お腹のハリや陣痛がどうか」を評価するためにモニターをつけます。お腹にモニターの装置をつけて、「赤ちゃんの心拍の波形」「子宮の収縮の波形」を測定します。モニターの波形をみて、「赤ちゃんの具合が大丈夫か」「(切迫早産などで)子宮が収縮していないか」など評価します。

まとめ

  • 妊娠中後期の性器出血は「胎盤が剥がれるときの出血」「子宮の入り口が開いてくるときの出血」にとくに注意が必要です。
  • 「常位胎盤早期剥離」や「前置胎盤の警告出血」は緊急事態であり、赤ちゃんを早く出す必要があります。
  • 「切迫流産」「切迫早産」は、安静とハリ止めのくすりを使用して治療管理します。

下着に出血がついていた場合、驚いたり、とても不安に思うでしょう。
妊娠中の性器出血では、「常位胎盤早期剝離」などの緊急事態の可能性があるため、時間外でも「緊急」の受診が必要です。ただし、「子宮頸管ポリープ」などで何回も出血している場合は緊急性はないため、緊急の受診が必要かどうかは状況によります。
いずれにせよ、妊娠中の出血があったときには、かかりつけに受診を相談するようにしましょう。

この記事によって、「妊娠中の性器出血」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。

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