結論ですが
必要な栄養素を、必要な量を、バランスよく食事をしましょう。
この記事は「産後の女性」に向けて書いています。
産後の生活のさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「母乳と食事」についてわかります。
「しょっぱいもの」「あまいもの」を食べ過ぎてしまうと乳腺がつまりやすくなるという噂を聞いたことがあるかと思います。
そのような噂によって、甘いものやカロリーの多いものを避けて、産後十分な栄養をとっていない人もいます。
実は、産後では妊娠していない時よりも必要カロリーは増えることになります。
もちろん甘いものばかり食べて栄養バランスが偏るのは良くないですが、特別制限する理由はありません。
まことしやかに「しょっぱいもの・あまいものを食べ過ぎてしまうと乳腺がつまりやすくなる」と経験則で言われていますが、実はその根拠となる事実はないです。
また、産後の食事に関しては、国・地域によってさまざまな「伝承」があったり、まことしやかに言われている「うわさ」にあふれています。
そうした「食事神話」による不安が解決できればと思います。
今回、「母乳と食事」について説明していきます。
この記事のまとめ
- 母乳栄養は赤ちゃんにとって様々な利点があり、国際的に推奨されています。
- 良い母乳のためには「必要な栄養素を、必要な量を、バランスの良い食事」をしましょう。
- 産後の食事は、まず自分に必要なカロリーを計算し、栄養バランスのとれた食事をしましょう。
「母乳栄養」が国際的に推奨されています。
赤ちゃんへの推奨される栄養法は時代とともに変わっていますが、今は国際的に「母乳栄養」がすすめられています。
赤ちゃんへの栄養方法として「母乳栄養」「ミルク栄養」などあります。「母乳栄養」は一番自然な方法であり、WHOやユニセフなど国際的にも母乳栄養をすすめられています。
とはいっても実際には、どうしても母乳が出なかったり、赤ちゃんの歯があたって乳頭が傷だらけになっている人もいてあり、「母乳栄養」をつづけるのは大変な部分もあります。
また、近年では産後積極的に働く女性も増えている社会背景もあり、どうしても「ミルク栄養」中心になってしまうこともあります。
そんな大変な「母乳栄養」ですが、ユニセフでは「母乳育児を成功させるための10ヵ条」というものが出ており、病院によっては「母乳栄養」を積極的にサポートしている場所もあります。
母乳栄養の利点は何ですか?
- 赤ちゃんの栄養
- 赤ちゃんの免疫獲得
- 子宮の復古
- スキンシップ
- ミルク代がかからない
赤ちゃんの栄養
母乳中にはさまざまな栄養成分がふくまれています。
お産を終えてすぐは「初乳」といって、「蛋白質」「電解質」などを多く含み、産まれたばかりの赤ちゃんに必要な栄養が含まれています。
母乳の成分は時間とともに栄養成分が変わり「成乳」といって、「脂肪」や「糖」を多く含みエネルギーが高くなっていきます。
母乳は産後の時間経過とともに成分が変化していくことで、そのときに赤ちゃんが必要な栄養をおぎなうようになっています。
赤ちゃんの免疫獲得
母乳中には、栄養成分以外にもさまざまな「免疫成分」も含まれています。
とくに「初乳」には「蛋白質」「電解質」などの栄養成分の他に「免疫成分」も多く含み、産まれたばかりの赤ちゃんの免疫獲得に貢献しています。
子宮の復古
お産が終わると、妊娠で大きくなっていた子宮はもとの大きさに戻ろうとしますが「子宮復古」とよばれます。乳頭への刺激によって脳から「オキシトシン」という子宮を収縮して「子宮復古」をうながすホルモンが分泌されます。
つまり、母乳栄養による乳頭刺激によって子宮復古がうながされます。
スキンシップ
母乳栄養は母親と赤ちゃんのスキンシップする貴重な時間になります。
母乳をあたえるときのスキンシップによって、愛情形成につながり、母性が育ち、健全な母子関係が形成されるといわれています。
ミルク代がかからない
「粉ミルク」による栄養ではミルク代がかかります。
完全ミルク栄養の場合は、新生児でだいたい月に1万円くらいかかる計算になります。
「母乳栄養」だとミルク代がかかりません。
では良い母乳のためにどのような食事をすればいいですか?
結論ですが、産後の状態に必要な栄養素を、必要な量を、バランスよく食事をしましょう。
では栄養素別に具体的にみていきましょう。
エネルギー
産後のエネルギー必要量は、自分の「身体活動レベル」を確認して必要カロリーを確認して、それに授乳中の「付加カロリー350kcal」を加えることで計算します。
身体活動レベルは日常生活でどのくらい体を動かしているのかを表したものでⅠ-Ⅲまであります。上の図から自分がどの身体活動レベルか確認しましょう。
脂質
「油物・乳製品・甘いものは、おっぱいが詰まったり乳腺炎を起こしやすい」という言い伝えがありますが、母親の脂肪摂取量が乳腺炎と関連するとされている科学的根拠をもった文献は少なくとも自分が探した範囲ではありません。
言い伝えを信じて脂質を極端に少なくする必要はなく、必要量の脂質を摂取するようにしましょう。脂質は1日のエネルギー比率が20-30%が理想です。
食材として「肉類」「魚介類」「大豆製品」「油」「加工食品」「菓子類」などがあります。
産後に限ったことではないですが、牛肉・豚肉など動物性食品に多い「飽和脂肪酸」は心筋梗塞など心血管病変との関連性があります。魚などに含まれている「不飽和脂肪酸」を摂取するのが良いでしょう。
また、マーガリンやショートニングなどに含まれている「トランス脂肪酸」は様々な体への悪影響が報告されています。WHOでは摂取量は1%未満にするよう報告されていますが、極力摂取しないようにしましょう。
タンパク質
「卵・大豆製品・乳製品はアトピーの原因となる」という情報があります。
これは、母親が長期的に牛乳を飲むと「ラクトグロブリン」という成分が母乳に移行して赤ちゃんにアレルギー反応が出ることがあるということに基づいているようです。
ただし、食物アレルギー診療ガイドライン2005では「アレルギー疾患を予防する意味で授乳中に卵・牛乳などの食事制限すること」は推奨されていないですし、米国小児学会では「授乳中に乳製品など制限して赤ちゃんへのアレルゲンの曝露を避けたとしてもアトピー疾患を予防することは出来ない」とされています。赤ちゃんのアレルギー疾患を予防する目的で、タンパク摂取量を制限する必要はありません。
タンパク質は1日のエネルギー比率が15-20%が理想です。
食材として「肉類」「魚介類」「大豆製品」「卵」などがあります。
カルシウム
カルシウムは骨や歯をつくる役割をしたり、筋肉や神経が働くために必要な栄養素です。また、精神状態を安定させる効果もあります。
「母乳を長く飲ませることが赤ちゃんに良いことはわかっていますが、自分が将来骨粗しょう症にならないか」不安を抱えている母親もいます。
2005年度の厚生労働省の指針から授乳中のカルシウム付加が削除されています。
その理由は、母乳中のカルシウムは骨カルシウム由来であり授乳中のカルシウム摂取では補うことはできこと、授乳が終わって6カ月後には骨量は妊娠前の状態に回復することがわかってるためです。
授乳中だからといってカルシウムを多く摂取する必要はないですが、1日あたりの摂取量の目安は成人女性で「600-700mg」であり、これを目安に摂取すると良いでしょう。
鉄分
「赤ちゃんが貧血だと言われました。私の食事に鉄分が足りなかったためでしょうか」「母乳育児をしていて、私も鉄剤を飲んだ方がいいでしょうか」と心配そうにする母親もいます。
母親の鉄剤をとっても母乳中の鉄濃度は増加しません。ただし、母親自身の貧血予防には鉄分は必要な栄養素です。
産後の鉄分摂取量は「8-9mg」とされており、これを目安に摂取すると良いでしょう。ビタミンCや動物性蛋白と一緒に摂取すると吸収率は良くなります。
まとめ
母乳栄養は赤ちゃんにとって様々な利点があり、国際的に推奨されています。
良い母乳のためには「必要な栄養素を、必要な量を、バランスの良い食事」をしましょう。
産後の食事は、まず自分に必要なカロリーを計算し、栄養バランスのとれた食事をしましょう。
母乳栄養において、産後の食事や栄養は、妊婦自身だけでなく、母乳で育つ赤ちゃんにも影響をあたえます。必要な栄養を、必要な量、バランスよく食事するように心がけましょう。
さまざまな噂を聞いてしまって、栄養が偏ってしまったり、極端に栄養が足りないということがないようにしましょう。
「より良い母乳が出るような食事」は存在しません。また、「母乳の出が悪くなるような食事」もなければ「母乳の出を良くする食事」も存在しません。
繰り返しですが、必要な栄養を、必要な量、バランスよく食事するように心がけましょう。
母子ともに良い環境で過ごせることを願っています。
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