結論ですが
月経移動は「問診」「処方」「注意点」という流れで診療が行われます。
この記事は「月経移動を希望する」女性に向けて書いています。
産婦人科受診への疑問・悩み・不安などが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「月経移動の診療の流れ」についてわかります。
月経移動したいですがどうすればいいですか?
このような疑問にお答えします。
大事な試合の日に月経が来てしまう!
旅行の日に月経が来てほしくない…
月経をズラしたいです!!
このような時に「月経移動」したいかと思います。
では実際にどのように「月経移動」が行われるのか?
それを知ることで、受診に対する不安が少しでも解消されれば幸いです。
今回、当クリニックで行う「月経移動の診療の流れ」を紹介したいと思います。
「宮の沢スマイルレディースクリニックホームページ」
https://www.miyanosawa-smile-lc.com/
この記事のまとめ
1.問診
普段の月経
普段の月経に関する情報を確認します。
とくに、「月経の周期」(何日型か?)、「月経が規則的かどうか」「最後の月経」「次の月経予定」などを確認します。
月経来ないで欲しい日
月経が来ないでほしい日を確認します。
たとえば、月経が来ないでほしい旅行や試合の日がいつからいつまでなのか確認します。その日に月経がかぶるかどうかを確認して、どのように「月経移動」をおこなうか判断します。
ピルの安全性
月経移動では「ピル」が処方されます。
ピルは副作用のリスクがあるため、安全に使えるかどうか確認する必要があります。
とくに「前兆をともなう片頭痛」「乳がん」「高度の高血圧」「血栓症になったことがある」などの場合はピルを使うことができません。
さらに、「40歳以上の年齢」「喫煙」「BMI30以上の肥満」などの場合は慎重投与が必要です。
2.処方
月経を遅らせる
- 「月経7日目以内」から「遅らせたい日」までピルを飲みます。
- 「次の月経開始予定日の5-7日前」から「遅らせたい日」まで中用量ピルを飲みます。
ピルを飲んでいる期間は、理論的に月経が来ないため、月経が来ないで欲しい日までピルを使用します。そして、ピルを飲み終わると、およそ「2日から5日後」に月経が起こります。
「生理7日目以内」からピルを飲む方法の方がより確実に生理をずらすことが可能です。
ただし、月経を止めている期間が長くなればなるほど、その途中で出血がおこってしまう可能性もあり注意が必要です。
月経を早める
- 「月経3-7日目」から高用量ピルを5-10日間以上飲みます。
- 「月経3-7日目」から低中用量ピルを10-14日間以上飲みます。
ピルを一定期間のんで「休薬期間」を作ることで、早めに月経を起こすことができます。
「高用量ピル」では5-10日間以上飲む必要があり、
「低用量ピル」や「中用量ピル」では10-14日間以上飲む必要があります。
月経を早める方法は、「ピルの飲み始めの時期が限られていること」「結果として月経を7-10日程度しか早めることが出来ないこと」「失敗することが多いこと」から、実際には月経を遅らせる方法を選ぶことが多いです。
3.注意点
余裕をもった受診
月経移動を希望する場合には、余裕をもって早めに受診しましょう 。
「月経を遅らせる方法」をえらぶにしても、「月経を早める方法」をえらぶにしても、ピルを飲み始める時期など決まっています。
あまりにギリギリに受診した場合はピルをのむべき時期を過ぎてしまうことがあります。
そのことによって、月経を移動できなかったり、月経移動に失敗する可能性が出てきます。
月経移動を希望する場合には余裕をもって受診するようにしましょう。
ピルの副作用
ピルの副作用として「吐き気」「血栓症」「肝障害」などがあります。
とくに「吐き気」の頻度は多いです。
ただし、ピルをのんでいるうちに「吐き気」は落ち着いてくることが多いです。「月経移動」に失敗しないために吐き気があっても基本的にはピルを飲みつづけることが大切です。
ただし、「血栓症」は命をおとす可能性があり注意が必要です。とくに、激しい「胸痛」「頭痛」や「ふくらはぎの腫れ・痛み」などがある場合は、ピルを継続しても大丈夫か相談するようにしましょう。
アスリート
女性アスリートの場合には「外傷」「時差への対応」「体重への影響」「今後のドーピングの可能性」などに注意しましょう。
「外傷」によって手術が必要になった場合は、手術前後でピルを休薬する必要があります。競技によっては外傷のリスクが高いものがありますので、ピルの内服には注意が必要です。
「時差への対応」は、海外遠征などで時差の影響を受ける場合には、ピルを飲む時間をあらかじめ確認しましょう。ピルを24時間ごと規則的に飲むようにしましょう。
「一時的な体重増加」をきたす可能性がピルにはあります。体重の変化が影響をあたえるような競技では注意しましょう。
現在(2021年5月現在)、ピル(OC・LEP)は「ドーピング禁止物質」ではないです。しかし、「ドーピング禁止物質」は1年毎に改定されており、「今後のドーピングの可能性」に注意しましょう。
まとめ
今回は「月経移動の診療の流れ」について説明しました。
そもそも月経って移動させることができるんだ!
このように、今まで「月経移動」を知らなかった人も多いです。
月経を上手に味方につけることで「生活の質」を上げることができます。
また、アスリートの場合は「競技パフォーマンス」の向上につながります。
日本においては、月経に対して、あまり他の人には相談したくないような保守的な雰囲気でもあります。
月経だけでなく自分の体としっかりと向き合いことはとても大切です。
今まで受診したことのない人にとって、婦人科を受診するのはためらわれるかと思いますが、勇気をもって婦人科を受診して相談するようにしましょう。
婦人科は困った人の味方です。
この記事によって「月経移動の診療の流れ」についての理解が深まり、受診に対する不安が解消し、一人でも多くの人に役立って頂ければ幸いです。
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