結論ですが
更年期の女性アスリートにおいて、「月経周期に伴う変化」「更年期障害」「骨粗しょう症」「骨盤底筋への影響」「筋肉・関節への影響」などのヘルスケアが重要です。
この記事は「いつまでもスポーツに打ち込みたい」女性に向けて書いています。
女性アスリートのさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「更年期の女性アスリートのヘルスケア」についてわかります。
競技力の向上を目指したい!
年齢に負けずトレーニングをしています!!
いつまでもスポーツを楽しみたいです!!!
このような気持ちにお答えします。
40代から50代にかけての女性では、体に大きな変化がおこります。
女性ホルモンである「エストロゲン」が低下する時期であり、40代から50代にかけての時期を「更年期」とよばれます。
更年期にはさまざまな症状が起こるため、ネガティブなイメージを持つ人が多いですが、
何歳になってもエネルギッシュで活動的に過ごす人もいます。とても素敵だと思います。
何歳になってもスポーツに打ち込み、競技パフォーマンスを高めたい!
そんな女性アスリートに向けた記事を書きたいと思います。
ということで、今回は「更年期の女性アスリートのヘルスケア」について5つのポイントに絞って説明したいと思います。
この記事のまとめ
更年期の女性アスリートのヘルスケア1:月経周期に伴う変化
月経周期とは
月経周期は「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」に分けられます。
そもそも「月経」(生理)は、定期的(おおよそ1ヶ月に1回)に、厚くなった子宮内膜が剥がれて出血とともに出てくることによって起こります。
月経から次の月経までを「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」→「次の月経期」…のような周期に分けられます。
月経周期とコンディション
個人差はありますが、月経周期によって「コンディション」(体調)は変わることが多いです。
女性アスリートへのアンケート調査では、月経後の「卵胞期」や「排卵期」にコンディションが良いとする回答が多かったようです。その一方、「月経期」や月経前の「黄体期」にコンディションが悪いとする回答が多かったです。
「月経期」における月経に伴う痛み・出血などの症状、「黄体期」においては頭痛・むくみ・イライラなどの月経前症候群、体重増加などが原因と考えられます。
月経周期への対応
月経を移動する方法や、月経に伴う症状を和らげることでコンディションを調整します。
具体的にいうと、一時的な月経調節・月経移動には「中用量ピル」が、長期的な月経コントロールには「低用量ピル」が使われることが多いです。
ただし、低用量ピルは血栓症のリスクが高めるため、40歳以上では慎重投与、50歳以上では禁忌(使用することが出来ない)なので注意が必要です。「プロゲスチン製剤」への変更を考慮します。
さらに、アスリートでは脱水・外傷・長距離移動などによって、血栓症リスクが高まる機会が多いため、さらなる注意が必要です。
更年期の女性アスリートのヘルスケア2:更年期障害
更年期障害とは
更年期障害とは、更年期において、「エストロゲン」の低下によって様々な症状を呈し、日常生活に支障をきたすものを言います。
通常、「更年期」は閉経前後の約5年間のことを指します。日本人の閉経は平均で「50歳」といわれています。
つまり、おおよそ「45歳から55歳まで」の「更年期」において、エストロゲン低下にともなう様々な症状を呈し、日常生活に支障をきたすものを「更年期障害」とよばれるのです。
更年期障害とコンディション
更年期障害による症状が、コンディションに影響を与えます。
更年期障害では、「エストロゲン」の低下によって、「自律神経症状」「精神神経症状」「運動器症状」「消化器症状」など様々な症状を呈します。
アンケート調査では、「冷え」「抑うつ」「全身倦怠感」の症状が、とくに競技に影響を与えるとする回答が多かったようです。
更年期障害への対応
更年期障害の治療では、「ホルモン補充療法」や「漢方薬」がよく使われます。
ホルモン製剤はドーピング禁止物質と誤認している医師も多いようです。
しかし、実際は「エストロゲン」「プロゲステロン」の製剤はドーピング禁止物質を含まず、むしろ「漢方薬」では同定困難な成分が含まれていることがあるため、アンチ・ドーピングの観点から使用できないです。
ただし、「選択的エストロゲン受容体薬」「エストロゲン・アンドロゲン合剤」「クロミフェン」などは男性ホルモンを増加される作用があり、ドーピング禁止物質となっているので注意が必要です。
更年期の女性アスリートのヘルスケア3:骨粗しょう症
骨粗しょう症とは
「骨粗しょう症」とは、「骨量」や「骨質」が低下し、骨がもろくなり骨折しやすくなった状態のことを言います。
「エストロゲン」(女性ホルモン)は骨の健康には欠かせないホルモンです。
更年期において「エストロゲン」が低下すると、骨密度の低下を来たし「閉経後骨粗しょう症」につながります。
骨粗しょう症の影響
骨粗しょう症だけでは、基本的に症状はないです。
しかし、「骨粗しょう症」であると、競技中の接触などによる骨折や、オーバートレーニングによる「疲労骨折」のリスクが高まります。
骨粗しょう症への対応
骨粗しょう症は、基本的に無症状であるため、まずは骨の評価を行う必要があります。
レントゲン検査などで骨密度の検査をして「骨粗しょう症」の診断をします。
骨粗しょう症の治療では、「ホルモン補充療法」や「骨粗しょう症薬」が使われます。
また、「カルシウム」「ミネラル」「タンパク質」「ビタミンC・D・K」などを含むバランスの良い食事を心がけるとともに、「適度な運動」「適度な日光浴」をするようにしましょう。
更年期の女性アスリートのヘルスケア4:骨盤底筋への影響
骨盤底筋とは
骨盤底筋とは、骨盤の底の部分を支えている筋肉のことです。
二足歩行の人間は、「膀胱」「子宮」「腸」などの臓器がさがってこないように「骨盤底筋」や「靱帯」などによって骨盤の底の部分が支えられています。
骨盤底筋の影響
妊娠・分娩や加齢、更年期における「エストロゲン低下」などによって、「骨盤底筋」の筋力が低下します。すると、「膀胱」「子宮」「腸」などの骨盤の中におさまっている臓器が下がってきて「骨盤臓器脱」がおこります。
「子宮が下がってくる感じ」「太ももに痛みが流れる」などの症状、「尿もれ」「頻尿」「尿意切迫感」などの排尿症状、便を我慢できなくなる「便失禁」などの症状がおこります。
骨盤底筋への対応
骨盤底筋の筋力低下予防として、妊娠出産時の骨盤底筋防護、産後の骨盤底筋体操などがあります。
骨盤底筋の筋力低下から「骨盤臓器脱」となった場合には、「ペッサリーリング」による整復、外科手術による治療、排尿症状を改善するため抗コリン薬による治療などがあります。
更年期の女性アスリートのヘルスケア5:筋肉・関節への影響
更年期において、「エストロゲン」の低下によって、筋肉や関節の働きが悪くなります。
エストロゲンには、筋肉を修復する作用があります。さらに、エストロゲンには関節軟骨のコラーゲンを保つ働きもあります。
実際に、エストロゲンが低下する閉経後女性には「変形性関節症」が多く、「関節リウマチ」は女性に多い疾患です。
さらに、「ホルモン補充療法」によって閉経後女性の筋肉痛や関節痛が減少したという報告があります。
まとめ
今回は「更年期の女性アスリートのヘルスケア」について説明してきました。
何歳になってもスポーツに打ち込みたい!
競技パフォーマンスを高めたい!!
そんな女性アスリートの手助けとなれば幸いです。
40代から50代にかけての女性の体に大きな変化がおこります。
女性ホルモンである「エストロゲン」が低下する「更年期」の時期のヘルスケアによって、将来の健康に過ごせるか決まります。
そして、スポーツもいつまでも楽しめることにつながるでしょう。
いつまでもスポーツに打ち込みたい女性アスリートはとても素敵です。
「更年期の女性アスリートのヘルスケア」について理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
コメントを残す