ピルをつかえない場合があります!【ピルの服用禁忌】

結論ですが

ピルを使ってはいけない場合があるので、ピルを使いはじめる場合には安全につかえるかどうか確認する必要があります。

この記事は「ピルを飲みはじめたいと考えている」女性向けに書いています。
この記事を読むことで「ピルをつかえない場合」についてわかります。

「避妊」や「生理による症状をやわらげる」ためにピルをつかいたいひとがいるかと思います。
ピルを使いはじめる場合、はじめに自分がピルを安全につかえるかどうか確認する必要があります。ピルを処方される前に必ず問診票を書いたり、いろいろと質問されるとおもいます。
ピルによる副作用がおこりやすい、またその副作用が重篤なものになる可能性がある場合には、ピルはつかえません。

ピルを安全に使用するためのガイドライン「OC・LEPガイドライン2015年版」があるため、それに準じて説明していきたとおもいます。

ちなみに、くすりをつかってはいけない場合を「禁忌」(きんき)といいます。
今回、ピルをつかえない場合、つまり「ピルの服用禁忌」について説明していきたいとおもいます。

この記事のまとめ

  • ピルを使いはじめる時に、ピルを安全につかえるかどうか確認する必要があります。
  • ピルをつかってはいけない場合があり「ピルの服用禁忌」といいます。
  • 「年齢」「妊娠」「産後」「喫煙」「手術前後」「過敏性素因」「症状」「現在かかっている疾患」「以前にかかったことのある疾患」などの状況によってピルをつかってはいけない場合があります。

年齢

初経前

最初の生理がまだ来ていない場合は、骨成長が完了していない可能性があります。
ピルを使用することで骨端の早期閉鎖をきたし、骨の成長が妨げられて身長が低くなってしまうことがあります。最初の生理がまだ来ていない「初経前」にはピルをつかえません。

50歳以上または閉経後

閉経と診断された場合、「避妊」や「生理にともなう症状をやわらげる」効果のあるピルをつかう意味がそもそもありません。
また、50歳以上の場合は、ピルによる血栓症のリスクが高いです。そのため閉経前であっても50歳以上の場合は基本的にピルをつかえません。

妊娠中、産後

妊娠中

妊娠中のピルの服用に関する安全性は確立されていません。
妊娠または妊娠している可能性がある場合は基本的にピルを使用できません。

授乳中

授乳中のピルの服用によって、母乳の量や質が低下することがあります。また、ピルが母乳に移行し、赤ちゃんが摂取した場合、「黄疸」や「乳房腫大」などの可能性があるため、授乳中は基本的にピルを使用できません。

授乳なし産後28日未満

授乳をしていない場合でも、産後まだ日が浅い(産後28日未満)場合はピルを使用できません。
妊娠中や分娩後は、出産のときの出血にそなえて、血液がかたまりやすい状態になっています。産後まだ日が浅い(産後28日未満)場合は、まだ血液がかたまりやすい状態なので、ピルによって血栓リスクがあがります。

喫煙

喫煙をしている人がピルを使用すると、心筋梗塞などの心臓や血管の疾患リスクが高くなります。とくに年齢が「35歳以上」で「1日15本以上」の喫煙をしている場合はリスクが非常に高くなるため、ピルを使用することはできません。

手術、長期安静など

手術前4週以内、手術後2週以内は手術にともなう血栓リスクがあるので、手術を予定している場合は、必要な期間休薬する必要があります。
また、長い間安静にしている状態の場合、血液の流れがわるいため血栓リスクがあるので、ピルを使用することができません。

過敏性素因

すべてのくすりにいえることですが、くすりを使用するとアレルギー反応をおこすことがあります。これは、自分のからだに異物が入ってきたときに、それを退治しようとして過度な過敏反応をおこして、全身に症状をきたしてしまいます。
ピルに対してアレルギー反応ふくめ過敏性素因がある場合にはピルをつかえません。

症状(異常性器出血など)

異常な性器出血をみとめ、診断が確定していない場合はピルをつかません。
万が一、原因として婦人科がんであった場合、ピルによって悪化してしまう可能性があります。異常な性器出血をみとめる場合には、かならず診察をうけましょう。

「現在かかっている」もしくは「以前にかかったことのある」疾患

片頭痛

「前兆をともなう片頭痛」の場合、脳血管障害リスクが高まります。
具体的には、頭が痛くなる前に、視野の一部がみえにくくなり徐々に拡大してくる「閃輝暗点」(せんきあんてん)などの前兆をともなう場合です。

乳がんにかかっている人

ピルに含まれる女性ホルモンによって乳がんの悪化や再発をうながす可能性があります。なお、乳がんに今までにかかったことのある人は、ピルは使用禁止ではないですが、ピルの慎重投与が必要です。

心臓や血管の疾患

「深部静脈血栓症」「血栓性静脈炎」「肺梗塞症」「脳血管障害」「冠動脈疾患」にかかっている人、および今までにかかったことのある人は、ピルを使用すると血液のかたまりやすくなり、これらの「心臓や血管の疾患」を悪化させてしまう可能性があります。

血栓素因、抗リン脂質症候群

ピルを使用すると血栓症などの「心臓や血管の疾患」リスクが高くなります。
血栓素因や抗リン脂質症候群と診断されている場合は、血栓リスクが高くなるため、ピルを使用できません。

重度の肝障害

急性ウイルス性感染や重症肝硬変などで重度の肝障害がある場合、肝臓の代謝機能が低下しているため、これらの疾患を悪化させてしまう可能性があります。

肝腫瘍のある人

「肝細胞がん」「肝細胞腺腫」などの肝腫瘍がある場合、ピルの使用によって症状が悪化することがあるため、ピルを使用できません。

重度の高血圧

ピルを使用すると、血栓症などの心臓や血管の疾患リスクが高くなります。
とくに「上の血圧(収縮期血圧)が160mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が100mmHg以上」の場合や血管病変をともなう場合は重度の高血圧にあたるため、ピルを使用できません。

重度の糖尿病

ピルを使用すると、血栓症などの心臓や血管の疾患リスクが高くなります。
とくに、「糖尿病性腎症」や「糖尿病性網膜症」などの合併症をともなう場合は重度の糖尿病にあたるため、ピルを使用できません。

心臓弁膜症

ピルを使用すると、血栓症などの心臓や血管の疾患リスクが高くなります。
とくに、「肺高血圧症」または「心房細動」を合併する場合、「亜急性細菌性心内膜炎」にかかったことのある心臓弁膜症のひとは、ピルを使用できません。

耳硬化症

ピルの使用によって、耳硬化症の症状が悪化することがあるため、ピルを使用できません。

妊娠中の黄疸・持続性掻痒症・ヘルペス

妊娠中に「黄疸」「持続性掻痒症」「ヘルペス」にかかったことのある人は、ピルを使うと再発する可能性があるため、ピルを使えません。

まとめ

ピルを使いはじめる場合、自分がピルを安全につかえるかどうか確認する必要があります。
問診票を書いたり、いろいろと質問うけるのは面倒だとおもいますが、答えるようおねがいします。くすりはリスクといわれますが、しっかりとリスクをマネジメントすることが大切です。事前に問診票などで確認することで、ピルを安全に使用することができます。

「年齢」「妊娠」「産後」「喫煙」「手術前後」「過敏性素因」「症状」「現在かかっている疾患」「以前にかかったことのある疾患」などの状況によってピルをつかってはいけない場合があります。
ふだんから自分の「かかっている疾患」や「かかったことのある疾患」を十分把握することが、ピルを使い始めるときだけなく自分の健康管理するうえで役に立ちます。

自分自身のからだについて理解をしておくことが、ピルにかぎらず医療介入をおこなう上で大切となります。

この記事によって自分自身のからだと向き合っていける手助けとなれば幸いです。