結論ですが
染色体は、細胞の中の「核」の中に含まれており、「DNA」が折りたたまれて収納されています。
この記事は健康に関心のあるひとに向けて書いています。
医療に関するさまざまな悩み・疑問・不安などが解決できればとおもっています。
今回は「染色体」に関しての記事です。
よく、TV・メディアなどで「染色体」という言葉を耳にするかと思います。
とくに年齢が高くなって妊娠すると、赤ちゃんの「染色体異常」が上がる
出生前検査で「染色体異常」がわかる
…など。
そして、昔の理科や生物の授業で、「ヒトは46本の染色体がある」とおぼろげながら学んだ記憶もあるかもしれません。
産婦人科では、出生前検査で説明するときに、「染色体異常」というものが取り上げられることが多いです。
意外と頻度は多く、とくに妊娠の高齢化によって、話題に取り上げられることも多くなったので、説明する機会が多いです。
今回は、そんな「染色体」について説明していきたいと思います。
この記事のまとめ
- 「細胞」の中の「核」という部分に「染色体」は存在します。
- 「染色体」の中には、2重らせん構造をしている「DNA」が折りたたまれて収納されています。
- 「DNA」の配列のうちタンパク質の生成に関わる部分のことを「遺伝子」とよばれます。
- 男性の場合は「XY」、女性の場合は「XX」という性染色体のパターンです。
- 常染色体の数の異常には「21トリソミー」「18トリソミー」「13トリソミー」などがあります。
- 性染色体の数の異常には「ターナー症候群」「クラインフェルター症候群」「トリプルX」などがあります。
- 染色体の構造の異常には、「欠失」「転座」「逆位」「重複」などがあります。
染色体ってなんですか?
染色体は、細胞の中の「核」の中に含まれています。
細胞分裂をして細胞の数を増やしていますが、そのときに見られる棒のような構造を「染色体」と呼ばれています。
染色体の中には、2重らせん構造をしているDNAが折りたたまれて収納されています。
ヒトのからだは細胞がたくさん
ヒトの体にはたくさんの細胞があり、おおよそ「60兆個」あるといわれています。
1つの受精卵が赤ちゃんに育っていく間に、細胞分裂して細胞の数を増やしていき、さまざまな臓器を形成していきます。1つの細胞が最終的には「60兆個」の細胞に分裂し、ヒトの体をつくるのです。
細胞の中の構造
細胞の中には、「核」という構造と「細胞質」という構造に分かれています。
「細胞質」の中には「小胞体」「ゴルジ体」「ミトコンドリア」などの構造があります。
その中でも「核」が重要な役割をしており、さきほど説明した「染色体」などが核の中に存在しており遺伝情報として核の中に収められています。
DNAと遺伝子
染色体の中には、2重らせん構造をしている「DNA」が折りたたまれて収納されています。
「DNA」は、「アデニン」(A)・「チミン」(T)・「グアニン」(G)・「シトシン」(C)の4つの塩基パターンから成り立っています。そのうちタンパク質の生成に関わる情報をもっているDNA配列を「遺伝子」と呼びます。
なお、すべてのDNAがタンパク質生成に関する情報をもっているわけではありません。ヒトは「約25000個」の遺伝子を持っていると言われています。
「細胞」と「染色体」と「DNA」と「遺伝子」の関係
「細胞」の中の「核」という部分に「染色体」は存在します。
「染色体」の中には、2重らせん構造をしている「DNA」が折りたたまれて収納されています。そしてDNAの配列のうちタンパク質の生成に関わる部分のことを「遺伝子」とよばれます。
染色体の性別による違い
ヒトの細胞の中には「46個」の染色体が含まれています。
そのうち、各22対「44個」は常染色体、1対「2個」は性染色体とよばれています。
性染色体には「X染色体」と「Y染色体」があります。
男性の場合は、「X染色体」と「Y染色体」が1本ずつで1対
女性の場合は、「X染色体」が2本で1対もっています。
染色体の数は生物によって違う
ヒトの細胞の中には「46個」の染色体が含まれています。
生物によって染色体の数は異なっています。たとえば、ショウジョウバエでは「8個」と少なく、同じ哺乳類のチンパンジーでは「48個」、金魚では「104個」です。
生物の大きさと染色体の数は比例しているわけではありません。
染色体の異常
染色体の異常には、おおまかに「数の異常」と、「構造の異常」に分けられます。
ヒトの細胞の中には「46個」の染色体(44個の常染色体と2個の性染色体)が含まれています。「数の異常」では、その数が多かったり、少なかったりします。「構造の異常」では、染色体の「欠失」「転座」「逆位」「重複」などの異常があります。
常染色体の数の異常
21トリソミー(ダウン症候群)
21トリソミー(ダウン症候群)は、21番目の染色体が3本あることによって生じます。
知的障害や運動能力に発達に遅れがみられます。また、他の病気になりやすく、心臓や内臓の病気を合併する可能性が高くなります。
18トリソミー(エドワーズ症候群)
18トリソミー(エドワーズ症候群)は、18番目の染色体が3本あることによって生じます。
多くの場合は心臓の病気など多様な身体的異常と重度の知的障害などがみられます。近年では治療によって10歳ごろ生存している方もいますが、明確な治療法はみつかっておりません。
13トリソミー(パトウ症候群)
13トリソミー(パトウ症候群)は、13番目の染色体が3本あることによって生じます。
発育障害、重度の知的障害、心臓の異常、出生時の低身長などがみられます。明確な治療法はみつかっておりません。
性染色体の数の異常
ターナー症候群
女性の性染色体の2本あるX染色体のうち1本がない状態「XO」によって生じます。
低身長、無月経、難聴、心臓の病気などが見られます。注意欠如・多動症・学習障害などをみとめ学校の成績が低くなる傾向があります。
クラインフェルター症候群
男性の性染色体のX染色体が1本余分ある状態「XXY」によって生じます。
知能は正常かやや低めですが、発語と読むことに障害があり、計画を立てることが難しい傾向にあります。思春期は正常な時期に訪れますが、精巣は成長せず、不妊症などが見られます。
トリプルX
女性の性染色体のX染色体が1本余分ある状態「XXX」によって生じます。
明らかな身体的異常はまれにしか起こりません。知能が若干低く、言語能力に問題があり兄弟姉妹や学校で問題が起こることがあります。また、月経不順や不妊症が起きることがあります。
染色体の構造の異常
欠失
染色体の構造の一部が「欠失」します。
代表的なものに「1p36欠失症」「4p欠失症」「5p欠失症」「15q11.2欠失症」「22q11.2欠失症」などがあります。
転座
「転座」には、「相互転座」と「ロバートソン転座」などがあります。
「相互転座」は、非相同染色体の間で一部が交換されることで生じます。
「ロバートソン転座」は、2つの非相同染色体が連結されて生じます。
逆位
「逆位」は、1つの染色体に2ヶ所の切断が起こり、その断片が反対向きに再構成されてしまうことで生じます。
重複
染色体の構造の一部が「重複」します。「欠失」と比較すると臨床的な影響は少ないです。
まとめ
- 「細胞」の中の「核」という部分に「染色体」は存在します。
- 「染色体」の中には、2重らせん構造をしている「DNA」が折りたたまれて収納されています。
- 「DNA」の配列のうちタンパク質の生成に関わる部分のことを「遺伝子」とよばれます。
- 男性の場合は「XY」、女性の場合は「XX」という性染色体のパターンです。
- 常染色体の数の異常には「21トリソミー」「18トリソミー」「13トリソミー」などがあります。
- 性染色体の数の異常には「ターナー症候群」「クラインフェルター症候群」「トリプルX」などがあります。
- 染色体の構造の異常には、「欠失」「転座」「逆位」「重複」などがあります。
DNAは「生命の設計図」と表現されます。
DNAの配列のパターンが、ヒトのからだを作っている「タンパク質の設計図」になります。
細胞の中にある「染色体」も「DNA」も「タンパク質」から出来ています。「ホルモン」「抗体」「酵素」といった体の機能を維持するために大切なもの、さらに「筋肉」「皮膚」「軟骨」などの体の構造を維持するためにも「タンパク質」が使われています。
つまり、体の構造のありとあらゆる所に「タンパク質」が使われており、それぞれの「タンパク質の設計図」がDNA配列そのものなのです。
そして、DNAが収納されている「染色体」はとても重要な役割を担っています。
ヒトがヒトとして成り立っているためには、「DNA配列」が設計図となっておりとても大切なのです。生命の神秘を感じます。
この記事によって「染色体」の理解が深まり、一人でも多くの人の役に立つことを願っています。
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