手術にはどのような危険性がありますか?【手術リスク】

結論ですが

残念ながら100%安全な手術はないです。

この記事は「手術を受けるかもしれない人」に向けて書いています。
手術に関するさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「手術リスク」についてわかります。

  • 手術をするか考えてくるよう言われた!
  • どう考えればいいのかわからない!?
  • このまま手術を受けた方がいいのだろうか?
  • 手術にはどのような危険性があるのだろう??

これらの不安や疑問について説明していきます。

お腹の痛みなど症状が心配で病院を受診すると、今までわからなかった病気が見つかるとがあります。
そして、病気の治療のために手術が必要と言われることもあるでしょう。
そのような時に、「手術」という言葉は聞いたことがあるけれど、実際に自分に行われるとなた場合、どのような危険性があるのか気になるかと思います。

手術の種類にもよりますが、手術には大きいものから小さなものまであります。100%安全な手術はなく、ある一定確率で良くないことがおこる「合併症」や「リスク」と呼ばれるものがつきものです。

今回は、手術にはどのような危険性があるのか、「手術リスク」について説明していきます。

この記事のまとめ

  • 残念ながら、100%安全な手術というものはない
  • 手術だけでなく医療行為には様々なリスクがつきものです。
  • 手術操作によって「臓器損傷」「出血」「感染症」「術後膿瘍」「術後出血」「痛み」などのリスクがあります。
  • 手術にともなって「手術体位によるリスク」「輸血によるリスク」「血栓塞栓症」などのリスクがあります。

医療行為にはリスクがある

残念ながら、100%安全な手術というものはないです。
そして、「手術」だけでなく「医療行為」というものには、さまざまなリスクがつきものです。
たとえば、造影剤を使用した検査(造影CT検査など)の場合、造影剤という薬の使用による「アレルギー反応」などが起こるリスクがあります。
また、手術で出血が多くなった場合に行う「輸血」という医療行為にもリスクがあります。
頻繁におこなわれますが、採血のためにおこなわれる「末梢静脈穿刺」にも、神経損傷・出血・血腫などのリスクが伴います。
とくに何もないことが多く問題になることは少ないですが、人に何かしらの介入する「医療行為」にはリスクがつきものです。いくら注意して行っても、ある一定確率で何かしらの良くないことが起こってしまうものです。

 

手術操作によるリスク

手術といっても種類が沢山あります。ここでは主に婦人科で行われる子宮や卵巣に対する「腹部手術」に関してのリスクについて説明していきます。

臓器損傷

婦人科であれば、子宮や卵巣の近くにある「膀胱」「尿管」「腸」などの臓器を手術操作によって損傷する可能性があります。
もし、「腸」を損傷した場合は、外科の先生に修復を依頼します。腸の損傷部位によっては、「人工肛門」が必要となる場合があります。
また、「膀胱」や「尿管」という、おしっこの通り道を損傷した場合は、泌尿器の先生に修復を依頼します。場合によっては、「尿管ステント」「腎ろう」「人工膀胱」などを留置する必要な場合があります。

出血

子宮は血流豊富な臓器であり、手術操作によって出血量が多くなる場合があります。
とくに妊娠中の手術の代表である「帝王切開術」では、出血量が多くなり輸血が必要になる場合があります。また、手術操作にともなって「血管損傷」がおこると出血が多くなります。
出血が多く「血圧」など血行動態が不安定となる場合は「輸血」など行われます。

感染症

お腹の手術では、体にメスを入れるため、手術操作が加わった場所に感染する可能性があります。たとえば、お腹のキズの部分に感染を起こすと「創部感染」、お腹の中に感染すると「腹腔内感染」などがおこります。
また、手術にともなう医療行為によっても感染症を引き起こす可能性があります。
たとえば、尿カテーテルの留置にともなう「尿路感染」・人工呼吸器にともなう「肺炎」「気管支炎」などが挙げられます。

術後膿瘍(のうよう)

手術に伴う感染症がひどくなって細菌のかたまり「膿瘍」(のうよう)が形成されることがあります。術後に「膿瘍」が形成された場合は、抗生剤による治療だけでなく、「膿瘍」を取り除くための手術や処置が必要になることがあります。

術後出血

手術は「縫合部分」や「出血」などお腹の中の状態が大丈夫なことを確認してから、お腹を縫合し閉じて手術が終わります。
しかし、手術の後からお腹の中で出血が起こることがあります。少量の出血であれば、自然に止まっていきますが、出血量が多い場合は、出血を止めるために再手術が必要となります。

その他

手術には、大なり小なり必ず「痛み」がともないます。
術後に快適に過ごすために、手術後の痛みのコントロールが重要になってきます。
他にも、手術による体への負担のため「持病の悪化」や「偶然ほかの病気が発生する」などのリスクなどがあります。

手術に伴うリスク

手術体位によるリスク

手術では、ずっと同じ姿勢のままでいることが多いです。
とくに、全身麻酔による手術、長時間におよぶ手術の場合は、手術体位によって「皮膚障害」や「神経障害」が起こってしまうこともあります。
とくに「栄養状態が悪い人」や「糖尿病などの併存症がある人」は、皮膚障害が起こりやすいです。
また、神経が圧迫されるような体位であったり、神経が過度に伸ばされるような体位であると「神経障害」につながります。
神経障害を防ぐため、ウレタンマットなどで除圧したり、手術体位が安全なものか、ベッドの傾きを変える場合に大丈夫な姿勢なのか、神経が圧迫されていないか適宜確認することが重要です。

輸血によるリスク

出血が多く、血行動態が不安定な場合は「輸血」を行われます。この「輸血」という医療行為にもリスクがあります。
たとえば、輸血製剤が体内に入った時に「アレルギー反応」(発熱、発疹、かゆみなど)を起こす可能性や、重症化して「アナフィラキシーショック」を起こし死に至ることもあります。
また、「B型肝炎」「C型肝炎」「HIV」などのウイルスが血液製剤に含まれていた場合、輸血を通じて感染することがあります。
輸血する前にこれらの感染症の検査をするとともに、輸血して2-3ヶ月後にはこれらの感染症が大丈夫なのか検査をして確認します。
また他にも輸血にともなう「肺障害」「溶血性反応」「低体温」「電解質異常」など様々なリスクがあります。

血栓塞栓症

手術後の「安静指示」や「痛み」のため、手術後は体を動かすことが難しい場合があります。とくにキズの痛みが強かったり、麻酔で眠かったり、手術による体への負担による疲労感が強いと、体を動かすことが難しいです。
体を動かさないと、体の血液の流れが悪くなってしまい「血栓」(けっせん)という血液の塊が出来てしまうことがあります。その「血栓」が剥がれてしまい肺の血管に詰まってしまった場合「肺血栓塞栓症」といって、命を落としてしまうこともあります。
「血栓症」を予防するために、手術した後はできるだけ早めに体を動かしてもらう「早期離床」、ベッドの上でもできる「運動指導」が行われます。
また、脚にきつめのストッキング「弾性ストッキング」を装着したり、ふくらはぎをマッサージする「フットポンプ」を装着したりします。
また、血栓のリスクが高い場合によっては「血液をサラサラにする薬」を使って血栓症の予防をおこないます。

まとめ

  • 残念ながら、100%安全な手術というものはない
  • 手術だけでなく医療行為には様々なリスクがつきものです。
  • 手術操作によって「臓器損傷」「出血」「感染症」「術後膿瘍」「術後出血」「痛み」などのリスクがあります。
  • 手術にともなって「手術体位によるリスク」「輸血によるリスク」「血栓塞栓症」などのリスクがあります。

残念ながら100%安全な手術はありません。手術に限らず医療行為には様々なリスクがあります。
手術の合併症によって命をおとす可能性もあり、手術ってこわいかと思うかもしれません。
しかし、命を落とすレベルの合併症がおこるのは非常に稀であり、とくに問題なく手術が終わることの方が圧倒的に多いです。

病状によっては、手術がかならず必要なものもあります。
「手術の必要性」と「手術のリスク」を見定めた上で、最終的に手術を受けるかどうか判断するのが良いかと思います。

手術にともなう合併症は、ある一定確率で起こりうるものなので、リスクをしっかりと認識し、少しでも「合併症0」に近づくように努め、医療者の立場として安全な手術を提供していきたいと思います。

この記事によって「手術リスク」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。

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