結論ですが
安全に手術をおこなうために術前検査がおこなわれます。
この記事は「手術を受けることになったひと」に向けて書いています。
手術に関するさまざまな疑問・不安・悩みなどが解決できればと思っています。
この記事を読むことで「術前検査」についてわかります。
手術が決まったら、
- 手術ってどんなことをするの?
- はじめてなので何もわからない?
- どのような日程になるの?
- お腹を切るってこわい!
などさまざま不安に思うことでしょう。
手術の種類にもよりますが、大小ばらつきはあるもののリスクがつきものです。
手術をより安全に行うために、手術を行う前に検査がおこなわれます。
今回は「術前検査」について説明していきます。
この記事のまとめ
- 安全に手術をおこなうために術前検査がおこなわれます。
- 術前検査の目的は「手術前の健康状態を確認する」「麻酔計画・術後管理計画を立てる」 「手術前後で検査結果を比較する」ためです。
- 術前検査では「血液検査」「尿検査」「レントゲン検査」「心電図」「肺活量」などがおこなわれます。
なぜ術前検査をおこなうのですか?
1.手術前の健康状態を確認するため
手術が安全におこなうことができる健康状態かどうか確認するために術前検査がおこなわれます。
とくに、「高齢」だったり「合併症」がある場合には、手術にともなうリスクが高くなります。手術は体への負担がかかりますがその負担に耐えられる状態なのか、手術中に持病が悪化する可能性があるかなど術前検査をおこなって評価をします。
必要があれば、合併症の治療をしっかりとおこなってから手術の予定を改めて組むことになります。
2.麻酔計画・術後管理計画を立てるため
術前検査をおこなうことによって麻酔計画や手術後の管理計画を立てます。
たとえば、背骨が側弯していたり、背骨の間が狭い場合は、背中から行う麻酔を避けるようにしたり。心臓の病気をわずらっている場合には、手術後に心臓の病気が大丈夫かどうかを慎重に管理できるように「集中治療室」(ICU)でみる等の手術後の計画を立てます。
3. 手術前後で検査結果を比較するため
術前検査をおこなっておくと、万が一、手術による合併症など起こった場合に、手術の前後で検査結果を比較して判断することができます。
逆に術前検査をおこなっていないと、検査結果の異常が手術前から元々異常であったのか、手術の合併症によって生じた異常なのか判断つかないことになります。
かならず、術前検査をおこなって手術前の状態を把握するようにします。
どのような術前検査がおこなわれますか?
術前検査では、健康状態を把握するためにさまざまな検査がおこなわれます。
たとえば、血液検査では「血球算定」「生化学」「凝固系」「血糖値」「感染症」「血液型」などを検査します。
他にも「尿検査」「レントゲン検査」「心電図」「肺活量」などの検査がおこなわれます。
それぞれ解説していきます。
血球算定
「血球算定」では、「白血球」「赤血球」「ヘモグロビン」「血小板」など血球成分を測定します。とくに手術前に貧血がないか「ヘモグロビン」の値をみて判断したり、「血小板」が低下していて出血しやすい状態かどうか評価します。
生化学
生化学では、「肝臓の機能」「腎臓の機能」「電解質」(ミネラル分)などを測定します。手術のときに薬を使う場合に、腎臓の機能が悪化している場合は、量の調整が必要になってくる場合があります。
また、手術中にさまざまな薬が使われ、肝機能障害・腎機能障害が引き起される可能性があるので、手術前の状態を把握しておく意味合いもあります。
凝固系
凝固系では、「血液の固まりやすさ」を確認します。とくに血液をサラサラにする薬を飲んでいる患者では薬の効き具合を確認することがあります。また、手術中に出血が止まりにくい状態であるか判断する意味合いをあります。
血糖
血糖値測定では、「糖尿病」の可能性がないか確認します。糖尿病は、とくに初期では症状がないことが多く、術前検査で偶然発見されることも多いです。
糖尿病の場合は、免疫力が低下している場合があるため、手術による感染症にとくに注意が必要になります。
感染症
感染症検査では「B型肝炎」「C型肝炎」「梅毒」「HIV」など検査します。これらは、血液を介して感染する恐れがあります。例えば、針刺し事故を起こしてしまった場合、B型肝炎の患者から医療従事者であるわれわれに感染してしまう可能性があります。なので、これら感染症の患者に対する手術や医療行為を行う場合は、感染予防対策をとくに重点的に行います。
また、手術中の出血が多量の場合、輸血を行う可能性があります。輸血を通じて、稀ではありますが「B型肝炎」「C型肝炎」「HIV」など感染してしまう場合があります。輸血を行う前に、これら感染がないか確認する意味合いでも、術前に検査をしています。
血液型
血液型検査は、「輸血をおこなう可能性」に備えておこなわれます。
手術中の出血が多量の場合、輸血を行う可能性がありますが、基本的には血液の型が合っている必要があります。そして、実際に血液製剤とその患者の血液を混ぜて、問題ないことを確認するクロスマッチ検査を行ってから輸血を行います。
血液の型が合っていない場合、溶血反応などによって、輸血によって死に至る可能性もあります。緊急時における輸血で、型の違う血液製剤を使用する場合もありますが、基本的には血液の型が合っている製剤で、クロスマッチ検査で問題ないことを確認した血液製剤を用います。
尿検査
尿検査では「蛋白尿」「尿糖」の有無や、「白血球」などを確認します。
手術中はおしっこができないため、おしっこのバルーンを留置することが多いです。バルーンから感染すると「尿路感染症」が起こります。すると尿検査で「白血球」が増えるため、手術前後で比較することができる意味合いもあります。
心電図
心電図検査では、普段の安静時の心拍数がどのくらいか確認します。併存症で循環器疾患がある患者のコントロール状態を確認しておく意味合いもあります。稀ではありますが、何か手術中に急変を来しうるような不整脈が隠されていないか確認します。必要があれば、心エコー検査など追加の検査を行います。
レントゲン検査
レントゲン検査では、おもに「胸部」と「腹部」を撮影します。
胸部のレントゲン検査では、「心臓」や「肺」に何か異常がないか確認します。とくに心臓が大きくなっていないか、肺に水が溜まっていないか等を確認します。
腹部のレントゲン検査では、腸のガスの具合や、背骨の曲がり具合、石灰化などを確認します。背骨の具合によって、背中からの麻酔を行うかどうかの判断材料となります。また、腹部手術において、手術前後で画像を比較して、手術中にお腹の中にガーゼなどの遺残がないか確認します。
肺活量
肺活量検査では、閉塞性障害・拘束性障害がないか確認します。全身麻酔管理する際は呼吸が止まるので、基本的に人工呼吸器によって管理をおこないます。人工呼吸器管理の際に換気量など基準となります。
まとめ
安全に手術をおこなうために術前検査がおこなわれます。
術前検査の目的は「手術前の健康状態を確認する」「麻酔計画・術後管理計画を立てる」 「手術前後で検査結果を比較する」ためです。
術前検査では「血液検査」「尿検査」「レントゲン検査」「心電図」「肺活量」などがおこなわれます。
術前検査は種類が多く、大変かと思います。
とくに普段病院に通っていないような人にとっては、慣れない検査ばかりで疲れてしまうかと思います。
しかし、手術を安全におこなう検査なので、自分の身を守るという意味でも、しっかりと受けるようにしましょう。
そして、万が一検査結果でひっかかった場合には、担当医の指示に従うようにしましょう。場合によっては手術が延期することもあるかと思います。
仕事の休みの調整など予定がくるってしまうかと思いますが、手術は安全第一なので、しっかりと指示に従うようにしましょう。
この記事によって「術前検査」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
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